農業とキトサン~カニ殻のキチン質で複合汚染のない安全な食品を!
安全で日本一おいしいお米を届けるために
有機微生物農法実践農家 赤松 勇一
昭和15年3月13日生まれ。昭和50年農林省農業者大学校通信講座修了
主な著書:「田植機稲作の安定技術」農山漁村文化協会刊 (昭和51年)
「有機微生物農法による健康イネづくり」全国農業会議所刊(昭和63年)
昭和15年3月13日生まれ。昭和50年農林省農業者大学校通信講座修了
主な著書:「田植機稲作の安定技術」農山漁村文化協会刊 (昭和51年)
「有機微生物農法による健康イネづくり」全国農業会議所刊(昭和63年)
有機農産物と複合汚染 | キチン・キトサンのキレート効果で少しでも害の少ないコメに | 有機という「安全で美味しい」イメージの落し穴 | 環境汚染=複合汚染を食い止めるのはキチン・キトサンしかない | 土壌微生物と土づくりについて
有機農産物と複合汚染
いま、全国各地のデパートから小さなお店に至るまで、すべての店先には「有機栽培○○」と表示された農産物が陳列されています。
これは、それだけ有機栽培農産物に対する関心度が高まっているということにほかありません。
では、なぜに有機栽培の農産物が、こんなにまでもてはやされているのでしょうか。有機農産物を買い求める消費者10人中10人は、きまって皆こう言うはずです。「安全でおいしいからだ」と。
少しオーバーな言い方になるかもしれませんが、『有機栽培農産物=美味、安全』といった一つの方程式が一般消費者の間に定着しているようにさえ思えます。
しかしながら、私はこの方程式には、いささか疑問を投げかけたくなるのです。1974年に、朝日新聞に有吉佐和子さんの「複合汚染」が連載されました。
さまざまな分野から脚光を浴び、大反響を呼んだことは今さら申しあげるまでもありませんが、ここでまたなぜ「複合汚染」をとりあげるのかを申しますと、日本の最後の聖域でもあるコメの輸入自由化がなされた場合をとくに問題視したいからなのです。
我が国においては、今のところコメだけが自給率100%を保っています。他のすべての農産物は大小はとにかくも、そのほとんどが輸入に頼っています。・・・家畜の餌となると、とうもろこしや小麦等は95%以上が輸入品です。
皆さんはポストハーベスト農薬という言葉を聞いたことがありますか。「ポスト」は後、「ハーベスト」は収穫という意味で、収穫後に農産物の品質を保持するために処置する農薬のことを「ポストハーベスト農薬」と言います。
キチン・キトサンのキレート効果で少しでも害の少ないコメに
例えば、食料とともに家畜の飼料でもある小麦について少し述べてみましょう。
アメリカでは、小麦を日本に輸出する際に、日本では禁止や規制されているはずの農薬をポストハーベスト農薬として、防カビ、防菌、防虫対策に撒布してから輸出しています。
農薬は、外皮のほうに多く付着していますから、人間が食べる小麦粉の方はフスマを取り除いて粉にしますので、その割には安全ですが、家畜は危険な農薬が付着したままのフスマを直接食べることになります。
人間は肉や乳製品を食べますので、結局は間接的ではあるが、我々人間の胃袋の中にもポストハーベスト農薬が入ることになるわけです。
つまり、「複合汚染」というのはこういうことなのです。私は、カニ殻等を施用しての「有機微生物農法」という農法でコメを作っていますが、その最大のネライ(目的)は、カニ殻等に多く含まれるキチン・キトサンのキレート効果によって少しでも害の少ないコメを得たいからです。
少し学説的になりますが、土壌の中にはさまざまな微生物が何億とも何兆ともいう数で住んでいます。
しかしながら、それら微生物が全部農作物に対して有用に働いているのでは決しでありません。ほんの限られた種類の限られた数の微生物だけが農作物に恩恵を与えてくれているのです。
私が大変重宝して考えている微生物の一種に「放線菌」という微生物がありますが、この放線菌はキチン質を大変に好む微生物なのです。ですから、土の中にキチン質が多くあればあるほど放線菌もそれに伴なって増殖します。
【この放線菌なる微生物は、誰にもわかりやすく説明しますと、ストレプトマイシンを想像されるとよいかと思います】
そこで、私のカニガラ施用の微生物農法へ話しを戻しますが、放線菌を土壌中にできる限り多く増殖させることによって、他の害になる細菌や糸状菌等が原因となって起こる土壌の生理病から作物を守る手段が、有機微生物農法なのです。
私は、コメとほんのわずかの自家用野菜を作っているだけですが、私の仲間には私と同じ微生物農法を応用することによって、完熟トマトやホウレンソウ等の果菜を作っている人達も数多くあります。
有機という「安全で美味しい」イメージの落し穴
かつての生協は「より良いものをより安く」をスローガンに掲げて運動を展開してきましたが、最近では生産者と連携を結び、顔の見える「産直方式」へと運動が変わりつつあります。この現象を眺めて、私は当然のなりゆきと判断し、また注目もしています。
どこの誰がどんなふうにして作った農産物であるのかも不明のまま、ただ「有機栽培」の表現に餌づけられ、惑されて、無意識のまま有機栽培( ? )だというトマトやキュウリを安全で美味いと買い求めて胃袋に入れてしまっているのが偽らざる消費者の現実の姿なのです。
「有機農業」は今や空前のブームをなしていますから、農産物を作る側もこのブームをただ黙って見ているわけではありませんので、たとえどんな有機資材を使用しようとも(紛いものでも) 堂々と「有機」の表現をすることになるわけです。「安全で美味しい」イメージの落し穴は、何を申せ実はここら辺にあるのではないかということです。
それから、よく無農薬とか低農薬とか減農薬とか実に紛わしい名称をよく見かけますが、どんな基準でどのような農薬をどこまでの許容範囲で使用しての区別なのか明確ではありません。
少し専門的になりますが、ただ一口に農薬といっても、有機燐剤(スミチオンなど) 有機塩素斉IJ (P C P など)カーバメート系農薬(マンネブなど)といった種別に分けられます。
例えば、いちごの灰色カビ病防除によく使われるキャプタン剤の一つにオーソサイドというのがありますが、これは発ガン性のある農薬で知られています。散布する回数を少なくしたとしても、人体に危険な農薬を除外しなかったならば何もなりません。
農産物の商品価値を高めるためを大義名分に行われる農薬の酷使は、いずれ近い将来に環境の汚染にまで発展するものと思います。
私の有機微生物農法は、カニ殻をはじめとして骨粉、ナタネ油カス等を温醸醗酵してから田畑へ施用いたしますが、大半の有機農業で使用されている「有機資材」は家畜の糞や生活廃棄物が原料の資材である事が一般的と思っています。
環境汚染=複合汚染を食い止めるのはキチン・キトサンしかない
ポストハーベスト農薬については前述しましたが、プレハーベスト農薬(収穫前に使われる農薬)でも、土壌残留の観点から考えた場合は、よくよく注意して使うようにしないと、いくら有機農業だからといっても安心は出来ない事を消暫者も生産者も知る必要があります。
私はコメづくり農家ですから、コメづくりについて若干申し上げてみたいと思います。
コメづくりで真っ先にする仕事(作業)は、種籾の比重選です。より充実した籾を塩水等により厳選いたしますが、更にその次に種籾の消毒を行ないます。土壌(育苗土)も消毒します。苗が出来てからも何回か消毒します。
そして、ようやく完全な( ? )苗がつくられるわけですが、ここで皆さんに訴えたいのは、いくら無農薬栽培米と表示しているコメでも苗の時代にせよ、このように幾度と消毒を重ねたものは「如何がなものか」ということです。信憑性を問いたいです。
農薬に養護された苗は今度は本田へ移植( 田植え) されますが、本田では除草剤を散かれ、生育調節剤を施用され、さらに病害虫の消毒を行なわれてようやく玄米になります。
最近では、コメ余りの事態から端を発して、コシヒカリやササニシキ等の良食昧の品種への作付志向が増え続けていますが、コシヒカリもササニシキも耐病性や耐倒伏性に欠けている品種ですから、必然的に消毒や生育調節剤の施用がされることになってきます。
ここでまた皆さんに訴えたいのは、とくに生育調節剤のことです。生育調節剤は一般的にはホルモン剤で、中にはアメリカがベトナム戦争で使った枯葉剤の成分2-4Dも含まれているということです。べトちゃんドクちゃんのあの姿を思い起してみて下さい。
家畜の糞にはポストハーベスト農薬が・・・生育中の農作物にはプレハーベスト農薬が・・・と考えると、本当に安心して食べられる農産物がなくなってしまうようですが、今こそキチン・キトサンを応用する農法を真剣に考える時代が来たと思います。
空気・水・土壌等環境の汚染がどんどん進んでいく昨今の中にあって、もはや環境汚染=複合汚染を食い止めていく手段は私はキチン・キトサンしか他にないものと考えます。キチン・キトサン農法でつくった農産物こそが、本当の『安心して食べられる美味しい農産物』であると私は確信しています。
「キチン・キトサン農法の前途に栄光あれ」
土壌微生物と土づくりについて(総論)
今、農業分野においては「土づくり」が大きく叫ばれています。
農業に従事しない人達にとっては、「土づくり」とは一体何なのかと、きっと首をひねられる人もいるかと思います。
コメをはじめとして、すべての農産物はその母体が健康であれば消毒等の必要は全くいらず、収穫物(実、葉、茎、根)その物も「安全」です。
しかし、植物の生育に最も適している土とは果たしてどんな土かというと、①土が柔らかく、②肥もちが良く、③水はけが良く、④水もちが良く、⑤病原菌がいない土壌、こうしたものが一番良い「土」なのです。
しかしながら、こうした土は今の日本の自然土には極めて希にしかありません。日本中の大半の土壌は永年にわたる化学肥料と農薬の多投で、土本来の機能が完全に失われてしまっています。
自然破壊という言葉は良く聞かれますが、限りない人聞社会の発展と相反して、公害~環境汚染への拡大化は日に日に加速を増し続けています。(工業の発達、レジャー産業の急成長がこれに拍車をかけています)ここでは農業公害のみについてお話し致しますが・・・。
私が初めて農業に就いた昭和30年前半は、米多収穫時代の真っ只中でした。当然、農家である以上は誰しもが多収穫を目標に極度の多肥(もちろん化学肥料)と多量の農薬を要求し「多収穫技術」と銘打って栽培に取り組んだものです。
考えてみますと、結果的にそういった「近代化農業」の多収技術が土壌不良化を招く根本的な原因であったと思います。
ところで、皆さんは、野菜の葉や茎に含まれる硝酸塩という物質をご存じでしょうか。
これは体内に入ってから発ガン物質になる極めて有害なものであります。化学肥料の多投のみだけでなく産業廃棄物等も大いに関係がありますがことごとく汚染されてしまった土壌はそんなに簡単には元に戻ることはできません。
農業本来の使命は、ただ単に食料を生産し供給するばかりが役割ではないはずです。土、水、大気の浄化を成し遂げて、「安全」な食料を国民に供給し、子孫の繁栄に寄与・貢献することが最大の役割と思います。
今、日本の農業は激しく揺れ動いています。
兼業化へとひた走る農民の姿から想像して、農業本来の使命をすべての農民に求めるのはとうてい無理なことと思いますが、今こそが真剣に土づくりに取組むときであろうかと思います。
私は有機微生物農法に取組んでから既に十数年を経過致しましたが、機能を失った不良土壌を元に戻すのには、最低5年はかかります。私は複合汚染を警戒して牛豚馬鶏等の糞尿の施用は敬遠しています。
カニ殻を中心にした微生物醗酵肥料を主体に栽培をしていますが、これは土壌微生物(とくに放線菌)の増殖をはかり、その拮抗作用と静菌作用でもって病原菌の撲滅をはかる考えなのであります。
カニ殻には多量のキチン質が含まれていますから、増施するほど放線菌も著しく増えてまいります。放線菌が増えてまいりますと、病原菌であるフザリウム菌が消滅してきます。
私はイネ苗立枯病対策に応用しています。即ち土壌病原菌の多くは、そのほとんどが細菌、糸状菌によるものと思いますから、その天敵ともいえる放線菌の力を活用しているわけです。
私の知る限りでは(有機微生物農法の実践者の体験を通して)、イチゴなどのイオウ病、スイカやメロンなどのつる割れ病、コンニャクなどの根ぐされ病の発生がカニ殻施用で大幅に軽減されたという話しを聞いています。
ただ、放線菌の仲間にもジャガイモ、大根等のソウカ病を引き起こすのもいますが、普通は有害な細菌、糸状菌を退治する菌と考えてもさしつかえないものと思います。
今のところ、まだまだ微生物に対する理解度が足りないと考えていますが、土壌微生物を自由自在に人為的にコントロールできるようになれば農薬の必要性も無くなるだろうし、化学肥料の害(環境汚染)も次第に少なくなってくると思います。
最近まで行なわれてきた一般的な「土づくり」の方法は、主として土壌のもつ機能のうち物理性と化学性に力が注がれてきたと思いますが、これからは土壌微生物を応用した「土づくり」に学者も農業者も目を向けるべきであると思います。
(出典:「キチン・キトサン協会誌」VOL.2~4より)
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力ニ殻農法で安全な食物づくりを ~キチン・キトサン協会会員 赤松勇一
①稲作への力ニ殻(キチン・キトサン)の応用 ②ポストハーベストのはなし ③作物はなぜ病気に罹るのか
④温醸醗酵について ⑤コメづくりの基本として ⑥私のイネづくりのやり方
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