力ニ殻農法で安全な食物づくりを④
温醸醗酵について
キチン・キトサン協会会員 赤松勇一
微生物農法の要、「温醸醗酵」
わたしは、農薬等はなるべく使わずに微生物(主に放線菌)の力を借りて作物の病害を予防することに専念していますが、そこで今回は微生物農法の要ともいえる「温醸醗酵」についてを中心に記述してみることにします。醗酵を大きく二分いたしますと、好気性微生物による温醸醗酵と嫌気性微生物が関係する腐植醗酵とに分けられます。
私の農法で、はもちろん前者のほうでして醗酵中は炭酸ガスの発生と芳ばしい香りが漂ってきます。(腐植醗酵ではメタンガスの発生で悪臭を放ちます。)
しかしながら、温醸醗酵と腐植醗酵とは正に紙一重で、やり方次第では温醸醗酵を心がけてやったつもりでも途中から腐植醗酵へと変わってしまうおそれだってあり得ます。
温醸醗酵をやる上で最も心がけなければならないことは、好気性微生物を応用した好気性醗酵であるので、水分の調整や適温の保持とともに、常に酸素の供給を構ずる事が何よりも大事になります。
それでは、ここに私が実際にやっている微生物農法のための温醸醗酵のノウハウを披露いたしましょう。
第一段階として、原菌の培養をすることからはじまります。
原菌の培養は本当にユニークで、①米こうじ、②もち米、③里いも、④ニンジン、⑤ リンゴ、⑥ほうれん草の根、⑦いちご、③黒砂糖(原糖)、⑨ハチミツ、⑬小麦粉、Oカタクリ粉、⑫お湯、…を主材料にしそれに原々菌を添加して桶の中へ入れ仕込みますどぶろくづくりの要領で醗酵(約4~5 日間)させて出来上がります。
このようにして出来上がった原菌を今度はカニ殻、骨粉、ナタネ粕等の材料を倍地にして第二段階の温醸醗酵へとりかかります。培養確保する量によって前述の材料(カニ殻など)の量も違ってまいりますが、材料が集まりましたらよくかきまぜ合わせ水を補給し(この時の全体の水分含有状態は60~70% ぐらいが理想的である)山型に積込みます。
ムシロ等で全体を覆って伏込を完了させますが、厳寒期を除けば約2昼夜程で発酵してきます。(においがしてくるのでわかります)そして山型に積んだ中心部の温度が50℃位になったら切り返しを行ないます。
切り返しは温度の上昇に令せて適宜行ないますが、一応の目やすとして大体12時間おきぐらいに切返します。総体で20 回ぐらい(8~10日間位)切返しを重ねてまいりますと山型に積んだ裾の部分へ白い菌糸が発見出来るようになります。
こうなった時点でもう出来上がりですので山型に積むのをやめてなるべく早く天日で乾燥して仕上りとします。尚、においの経過について申しあげますと、はじめの切返しの時はまだ材料特有の臭いがしていますが日数の経過とともにその臭いも芳ばしい匂いに変ってきます。
初めて試される人やまだ熟知していない人で日数を経るに伴って悪臭がひどくなってくるという例もありますが、これは水分が多過ぎたりした場合に途中から腐植醗酵に移行した結果アンモニア臭(メタンカザス発生による)が出たのだと思います。
以上温醸醗酵について、培地の材料と培養のやり方を中心にそのアウトラインを述べてみましたが、田畑へ投入する場合はさらに拡大してやることによって尚一層の効果が期待出来るようになります。拡大法は前述の第二段階の培養醗酵の手順で行いますが、増量剤として私の場合カニ殻を多目に使用しています。
私の場合はほとんど田んぼに施用していますが、ご存じのように田んぼの場合は水を入れて土をかきまわす(代かき)のため放線菌の活動が一時鈍くなってしまいます。
効能が顕著に現れるのはやはり常に酸化状態にある畑のほうで、とくにハウス園芸をしている人達の間ではその効能が明確に現れている話が聞かれます。畑作物は得てして連作障害に悩まされるものでありますが、作る作物の種類によっての若干の違いはありますもののフザリウム等有害糸状菌が原因になる病気に対しては、はっきり効能が確認されています。
これまで、米そして畑作物について温醸醗酵した資材を施用した効果を列記してみますと…。まずコメですが、含有する蛋白質に比べでんぷんの量が多くなる傾向が見受けられます。(食味計による結果から)・・・炊き上がりがふんわりするほか甘味が増しているように思います。
次に畑作物ですが、ほうれん草など葉菜類の場合葉色が鮮明なほか葉肉が厚く、しかもあくが少なく甘味が増しています。またスイカ、メロン、イチゴ等の果菜類では耐病性を増すことはもちろん、日持ちがよくなり甘味は抜群に良くなってきます。根菜類、とくに大根はまるで梨でも食べているような甘い味がいたします。
その他果樹(リンゴ等) においても、糖分の合有率は口に入れただけで歴然と高い傾向にあることが直感としてわかります。
(出典:「キチン・キトサン協会誌」VOL.15より)
力ニ殻農法で安全な食物づくりを ~キチン・キトサン協会会員 赤松勇一
①稲作への力ニ殻(キチン・キトサン)の応用 ②ポストハーベストのはなし ③作物はなぜ病気に罹るのか
④温醸醗酵について ⑤コメづくりの基本として ⑥私のイネづくりのやり方
①稲作への力ニ殻(キチン・キトサン)の応用 ②ポストハーベストのはなし ③作物はなぜ病気に罹るのか
④温醸醗酵について ⑤コメづくりの基本として ⑥私のイネづくりのやり方
< 関連記事 >
■ 無農薬、カニ殻農法とは:名和川修(日本カニ殻農法研究会会長)
■ 生産者も健康でありたい~カニ殻肥料により無農薬栽培へ:羽生やい子(キチン・キトサン協会会員)
■ 有機農産物へのこだわり:内田光夫(キチン・キトサン協会会員)
■ 無農薬、カニ殻農法とは:名和川修(日本カニ殻農法研究会会長)
■ 生産者も健康でありたい~カニ殻肥料により無農薬栽培へ:羽生やい子(キチン・キトサン協会会員)
■ 有機農産物へのこだわり:内田光夫(キチン・キトサン協会会員)