生態系の中のキトサン | キトサンの機能性 | キトサン学術報告 | キトサン製品誕生秘話 | 農業とキトサン | キトサン・健康コラム | キチン・キトサン協会 | サイトポリシー



カニ殻由来の新素材「キチンナノファイバー」、安藤百福賞「発明発見奨励賞」受賞!

2019年3月12日(火)、ホテルニューオータニ (東京都千代田区)にて、2018年度食創会「第23回安藤百福賞」授賞式が開催されました。

食創会は、新しい食品の創造・開発の奨励を掲げ、1996年に発足。当日は、会長の小泉純一郎氏(元内閣総理大臣)が受賞者5件(7名)を表彰しました。

今回、大賞は「小胞体ストレス応答」のメカニズムを解明をした、森和俊氏 (京都大学大学院 教授) が受賞。また、「発明発見奨励賞」を、カニ殻から「キチンナノファイバー」を製造する技術を確立した、伊福伸介氏(鳥取大学大学院工学研究科 教授)が受賞しました。

カニ殻の主成分であるキチンは不溶性のため、扱いが容易ではありませんでしたが、伊福氏らの研究チームがキチンを極細のナノ化処理(10~20nm)したことでキチンナノファイバーの製造に成功しました。ナノ化したキチンは水での均一な分散が可能となり、他の素材との配合が容易に。食品や化粧品への添加により、腸内環境改善やダイエットなど健康効果、スキンケアや育毛などに期待が寄せられています。

21世紀に、キトサンの果たす役割

"MEDICUS CURAT,NATURA SANAT"「医師が手当てし、自然が癒す」

医聖といわれたヒポクラテスの名言です。この真意が今、現代に生きる私たちに脈々と伝わってきます。

19世紀以降、科学の発達とともに、医学は急速に発展し、遺伝子レベルでの疾患の診断が可能になり、消化管や他の臓器内の数ミリ単位の変異さえも的確に捉えることができるようになりました。

しかし、未だ地球上には3万種類の病気があるとされ、その3分の2が十分に解明されていないといわれています。

確かに、化学的に合成された薬剤が、天然痘や結核等の感染症をこの地上から激減させました。

が、その一方で、それとは裏腹に人類に多くの薬害をもたらしたということもいえます。

さらに、ヒトだけでなく、地球そのものも、今その全身を病みつつあります。

18世紀末の産業革命以来、ヒトは200年にわたってこの地球環境を汚染し続けてきたといえます。

炭酸ガスや亜硫酸ガスの放散による大気汚染、熱帯雨林の伐採による砂漠化、フロンガスの発散によるオゾン層の破壊、ダイオキシンの排出など地球の生態系に大きなダメージを与えています。

こうしてもたらされた環境破壊は、まさにヒトが加害者ですが、同時にヒトは被害者にもなっています。

文明の発達とはいえ、経済優先で、ヒトは自然の食物連鎖の設計図さえも知らず知らずに変えてきました。

しかし、忘れてならないことは、食物連鎖の最後尾にはヒトがいるということです。21世紀、ヒトと環境の復興を担うカニ殻キチン質の役割はさらに大きくなっていきます。


自然は、”自己治癒力を高める”名医

現代人は高度に発達した医療機器の虜となり、まず自分自身の力で癒すという試みを忘れつつあるのではないでしょうか。

健康作りで大切なことは、バランスの良い食事、適度な運動、十分な休養の三大要素であり、このことは古今東西を問わず不変です。

さらに、自然は何よりの名医です。

太陽(光) 、空気、水などの自然からの恩恵、食、運動、休息、精神(心)といった要素の調節により、ヒトは健康を維持・増進することができます。

ヒトは病気になってもその75%は自らの治癒力で癒すことができるといわれます。

しかしながら、さまざまな環境汚染の中で生きている私達は自然治癒力(自己治癒力)が衰えているといえます。

ヒトの健康維持・増進のために、この地上に彗星の如く現れたカニ殻キチン質のキトサン。この物質の最も重要な特性は、生体適合性があり、異物としてでなく人体に受け入れられ、ヒトの細胞を活性化し、自然治癒力を高めることです。

生体調節機能を有し、人体のリズムの調整を図り、ヒトの健康作りの名手であるキトサンは、まさに自己治癒力を高める”自然の名医”であるといえます。


キトサンの歴史的背景や有用性について、「キチン・キトサン協会誌」(Vol.9~10)より福地 知行氏(静岡県立大学薬学部名誉教授・工学博士、中央薬事審議会委員)が解説。

1800年代、甲殻類の外皮構成物質「キチン」が発見

カニ殻に含まれるキチン、そしてキトサン。

このキチン・キトサンという言葉、あるいはキチン・キトサン含有の食品については随分と理解され、実用に供されてその有用性は高く評価されているところです。

しかし、キチン・キトサンの発展してきた歴史的な背景は、余り知られていないのではないでしょうか。そこでその歴史的発展と特性について触れてみたいと思います。

先ず1811年、フランスの歴史学者「ブラコノー」によって、キノコの中にキチンが存在することが発見されましたが、この時はまだキチンとは呼ばれずファンジンと呼ばれました。

次いで1823年、フランスの自然科学者のオジールが、甲殻類の殻の部分(外皮) の構成物質として発見しました。これは、外皮構成物質である事から、ギリシャ語の封筒という意味を持つ「キチン」と命名されました。

1800年代というのは考えてみると日本では江戸時代末期であり、ヨーロッパでも現代の有機化学には程遠く、まだまだ手さぐりの時代であったようです。その時代にこのような発見がなされたのですから、その努力は並のものではなかったと思います。

1970年代、文部省がキトサンに科学研究費を

このキチンは一体どのような操作で発見されたのでしょうか。

原料として最も身近に存在するカニ殻について考えると、その甲羅・脚は蛋白質、灰分( 主として炭酸カルシウム) 、キチンの3成分から成り立っています。このうち蛋白質はアルカリに、カルシウムは酸にそれぞれ溶けます。

そこで、先ず塩酸でカルシウムを溶解除去し、次いで苛性ソーダで蛋白質を除去し、充分に水洗いをして残ったものがキチンということになります。もちろんそれぞれ条件がありますがここではそれについては触れません。

ともあれ、このようにして得られたキチンは殆んど純粋に近く、灰分が僅かに残る程度の白い粉状で得られます。

もちろん原料の処理つまり水洗、乾燥、粉砕を充分に行った後に化学的に処理をするわけです。キチンはN-アセチルグルコサミン(GlcNAc) といわれるものが多数集まったもので、一般にはポリマーといわれるものです。構成している元素は炭素、水素、酸素、窒素です。

キチンは水には溶けにくいのです。甲羅を構成しているものですから、水に溶けては困るのは当然なのです。また濃い酸、アルカリにも溶けません。

この性質が長期間研究室でも研究の対象になり得なかった要因の一つだと考えて良いでしょう。このキチンを薄いアルカリとその他の薬品で処理するとキチンと似ていますが、化学的な構造式が僅かに異なるキトサンになります。

キトサンはグルコサミン(GlcN) のボリマーです。そして一般にはキチンとキトサンとは共存しているのが通常です。キトサンはキチンと同様に水には溶けませんが、極く薄い酸に溶けてドロドロとしたゲルになります。

このゲルは水によって種々の濃度の状態のものを作ることが可能で、色々な性質を利用して各種の用途に供されています。これらの用途には未だ研究もされていない未利用の分野が多いです。

日本では、1970年代に文部省の科学研究費がキトサンの研究に始めて費され、以後すさまじい勢いで研究が始まり、その一部は実用に供されました。

例えば、ロシア領のサハリンから来たコンスタンチン君のやけどの治療にキチン・キトサンで造られた人工皮膚が用いられて、大変な効果があったといわれています。

キチン、長時間の濃アルカリ処理でキトサンに

キチン・キトサンが発見されたのは、今から200年も前のことですが、その後、長期間に渉ってキチン・キトサンに関する文献が見当らなかったことから、研究は潜在的にしかなされなかったように思います。

これは先ず、200年も前の時代の化学の進歩から考えて、粗キチンが得られたとして、既に充分な濃度のアルカリおよび酸で処理をして得られたものであるから、これ以上の処理は出来ないと考えても当然であったであろうと考えられています。

さらにその分子量まで正確に算出することは殆ど不可能に近かったのではないかと思います。それゆえ、最初にファンジンと名付けられたのは得られた粉体が極めて少量であったのであろうということ。

そして発見された時の量、つまり甲殻類の甲羅から得られた場合でも次に反応させ得るとか変化させ得るとかに必要な溶媒が見つからなかったと考えれば、実験は当然これまでで止まり、進むことが出来なかったのであろうと推察できます。

ただし、物理や化学の進歩が次第に進むにつれて、得られたキチンをさらに温度をかけて濃アルカリで長時間処理をするか、微生物を使ってやはり長時間処理をすることにより、その後の加工が容易なキトサンが得られるようになったのです。

この両者は原料が同じで構造も似ていて、この世界の中では共存していることが多いために、キチンと二つならべて書いたり、話されたりしているものです。性質も似ていると考えてよいでしょう 。

このようにして得られたキチンは有用性の高い健康食品として評価されていることは、その普及率から考えて、当然のなりゆきなのではないでしょうか。

自然の原料で、毒性は認められず

キチン・キトサンは前述のようにカニ・エピなどの殻を原料として製造されます。つまり原料は自然のものから造られているということで、製造の途中に使われている水も充分純粋なものを使用し、製造中に異物の混入の無いように注意されています。

このため、製品は安全無害です。このことは種々の実験によって確かめられています。 即ち、キトサンをマウスに与えて亜急性の毒性実験を行った結果、19日間続けて投与しても以上がなかったことが知られています。

このときの投与量は15g(正確には 15g/kg・日で、マウスの体重1kg当り、1日の量という意味です)で、もちろん対象として何も与えなかった同一環境のマウス群と比較しての場合に得られた値です。

また別の文献でも、やはりマウスで、18g/kgニワトリで6.5g/kg、ウサギでO.8g/kgの投与でも毒性が認められなかったことが明らかになっています。

これらの数字は一般に人聞が食用としている他のものに較べて確かに低い値です。

例えば、食用としているこの糖、つまり砂糖のLD50(試験をした人聞の半数が死に至るに必要な量で、体重1Kg当り、1日に与え得る量のこと)は12gといわれていますから、これらに較べても充分安全なことが理解出来ることと思います。

このように、キトサンが安全なことや有用性が実験で確認されています。

  • 宇宙、ビッグバン
  • 地球、微生物の進化
  • 機能性素材、キチンの構造
  • 食物、キチンの連鎖
  • 細胞、キチンの分布
  • 食物繊維、キチン
  • みえてきたキトサン①
  • みえてきたキトサン②
  • キチン質、キトサン
  • 脱アセチル化、キトサン

  • 偶然の出会いから
  • 力二殻健康食品、開発の経緯
  • 生物界のシステムにカニ殻が作用
  • キトサンが皮脂の再生能力を高める
  • 昔から、カニの殻の民間療法はあった
  • 一時的に好転反応も、副作用はない
  • キトサン研究で日本がリード

UP