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有機農産物へのこだわり


キチン・キトサン協会会員 内田光夫

有機リンの弊害

私が初めて農業に就いた2 0年くらい前は品質よりも収量第一で、冬から早春の時期に「トマト」や、「きゅうり」を作っていました。堆肥を入れ化学肥料や農薬もたくさん使って栽培していました。

ハウスの中は冬の時期でも30℃位に温度が上がり、湿度も非常に高く、病気の発生もしばしばありました。農薬散布も予防を兼ねて3 日から7 日位の周期で行っていました。

ある時、「農業雑誌に低毒性有機リン剤の体内蓄積」についての記事が載っていました。正直のところ私も大変不安になりました。有機リン剤 (殺虫剤) の中毒症状は10年位して現われ、経験の少ない医師は農薬の影響によるものかどうかの判断が難しいと言われています。

中毒症状としては、目の動きが悪くなり、頭がぼーっとしてくる。手や足の末梢神経が冒され感触がなくなると言われています。

私も自覚症状を覚え、日本で数少ない農薬中毒の研究を行っている神奈川県の北里大学付属病院で診察を受けてみることにしました。結果は普通の人の3 倍の有機リンが蓄積されているということでした。

先生は普通の生活においては問題ないと言われましたが、不安もあったので脱リン剤を1 カ月服用して再診したところ正常値になりました。その頃から脱農薬、有機農業への関心が急速に高まり、現在のように有機栽培「トマト」へのこだわりを持つようになりました。

カニ殻、骨粉等を微生物のエサに

有機微生物農法に取組み、肥料として家畜の糞尿は、いっさい使わず油カス、カニ殻、骨粉などを低温発酵させて、ぼかし肥料としてそれをハウス1 棟当り成分で5 kg~8 kg元肥として入れています。畑の作物は大なり小なり必ず連作障害が出ます。

皆さん御承知と思いますが、トマトはナス科であり一度作付けすると10年は同じ畑を嫌います。新しい畑に作付けした時は誰がやってもすばらしい生育をしますが、2 年、3 年経ちますと立枯れや、根コブ病等の障害が出てきます。

一般的には、土壌消毒や接木を行って連作をしています。接木をしたトマトは品種本来の特性が消えてしまい、おいしいトマトができません。この連作障害を克服するのが土壌微生物であり、有機農法なのです。

土1 g の中には何千万もの土壌微生物がお互いに桔抗作用を行ってバランスを保っています。連作するとこのバランスが崩れてしまうために連作障害が起こると言われています。

健全な土壌を保つためには油カス、カニ殻、骨粉等を微生物のエサとして与える必要があります。化学肥料ではエサにはなりませんし、土壌菌のバランスを保てません。

土壌微生物は、有機肥料を分解して作物に必要な栄養として作り、自らもエサとして食べて繁殖(静菌作用)していくのです。このように土本来の静菌力を高めることによって土壌病害から解放され、安全で、おいしい「トマト」ができるのです。

ここでおいしいトマトの見分け方を御紹介しよう。トマトの「実」全体が赤く完熟していて、ヘタが青く、実が固くしまっている物。上から見て白い線がスジ状にのびている物。白くうよ毛が生えている物。このようなトマトがおいしいのです。

カニ殻健康食品と出会って

H.3年9月にキチン・キトサン協会の定例の研修会に出席することが出来、我々同志が肥料として使っているカニ殻から作られた健康食品に出合いました。

その頃私も田んぼの肥料散布で足首をひねり、痛みもあったので半信半疑で飲んでみることにしました。一ヶ月位すると体の疲れもなくなり、3 ヶ月位飲んだ頃足首の痛みも取れていました。また年2 回位風邪をひいて医者に通院したものですがカニ殻健康食品を飲んで以来医者に行っていません。

私の場合風邪をひくと「カニ殻健康食品」のカプセルを口の中でつぶして飲んでいます。のどの痛みには良いようです。ふだんの日は夜だけ2 粒にしています。

子供達も夜1 粒、風邪のときは朝1 粒、夜1 粒にしています。おかげ様をもちまして元気に学校に通っています。農業においては、カニ殻肥料中心に土壌消毒せずにトマトはハウスで9 年の連作花は3 年目になりました。

ハウス栽培で代表的な土壌病害として根腐病や根にコブがつく、根コブ線虫があります。これらは4 年位連作をしてきますと発生してきます。

これはフザリウム菌やピシウム菌、リゾクトニア菌などにより発生するものです。一般的にはサンヒュームクローノレピクリン剤といった土壌くん蒸剤で消毒してゆきます。

私の場合モミ殻にカニ殻、油粕、骨粉、魚粉などで発酵させて堆肥を作り土全体にすき込んでゆきます。肥料は全部有機肥料を発酵させて使っています。

キチン・キトサンで、安全なトマト作り

トマトの病害虫で根腐れ萎ちょう病、灰色カビ病、温室コナジラミがあります。根腐れ萎ちょう病や灰色カビは冬から春にかけて特に根がボロボロに腐ったり青いうちにトマトの実が落下してしまう病気です。

温室コナジラミという病害は体長が2 mm位の白い虫で、トマトの実を吸汁しますとその部分は赤くならず青くぶちになって残ってしまいます。この虫はアメリカから輸入農産物に付着して日本にやってきた害虫で繁殖力がとても強く、薬剤抵抗性がついています。

私はこのような病気や害虫に対して積極的にキチン・キトサン溶液を使っています。消毒用としてキチン溶液の三百倍、焼ちゅうの三百倍を混合して10 日~2 週間に一度散布しています。

予防はもちろんのこと病気の回復や殺虫剤としての効果があります。温室コナジラミも散布中に落ちているのが確認できました。トマトは味の時代になっており、まずくては売れません。うまくて安全なトマト作りにキチン・キトサンは大いに役立っています。

次に花についての応用ですが特に花の種は野菜の種に比べて非常に細かく、例えばトマトは20mm2で1200粒位であるがトルコキキョウや霞草の種は1 mm2で1 万粒をこえます。このような微細な種をそのまま播種しても半分位しか発芽しません。その種を30倍のキチン溶液に1~2 時間浸けて、まきますとはぽ1 00% 発芽してきます。

育苗期間中もキチン溶液やアミノ酸リキッド溶液を10 日~2 週間に一度散布しています。

播種箱にカビ類が繁殖したときもキチン溶液と焼ちゅうの混合液で防いでいます。定植にする時は播種箱をキチン溶液にどぶ漬けにして植え付けます。活着促進と立ち枯れ防止のため欠くことのできないキチンの利用法の一つです。

生育期間中は2 週間に一度のペースで葉面散布を行います。これは単に生育促進だけでなく病気予防や害虫対策に役立っています。花やトマト、水稲で、多少は病気や害虫も発生します。しかし害が少なければ作物と共存していく時代なのかもしれません。

私はこれからも土や作物の栽培方法にあったキチン・キトサンの応用を確立して同志のみなさんと共にうまくて安心できる農産物の提供をして行きたいと強く思います。

(出典:「キチン・キトサン協会誌」VOL.9~10より)


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