力ニ殻農法で安全な食物づくりを①
稲作への力ニ殻(キチン・キトサン)の応用
キチン・キトサン協会会員 赤松勇一
有機微生物農法によるコメ作り
私は「有機微生物農法」というやり方でコメをつくっている農家です。俗にいう「有機栽培」とどこが違うかといいますと、私の農法は牛や豚などの糞(厩肥)は一切使わず微生物(主に放線菌)の力を借りて、土壌中の体質改善をはかり安全な農作物を作っていくというやり方なのです。土壌中には、土1 グラム当たり億の単位で細菌、糸状菌、放線菌等の微生物が住んでいます。中には作物づくりに役に立たないものや悪きをする微生物も数多くありますが、私は「放線菌」を増殖することで、それら悪い微生物を排除していく考えです。
しかしながら近年は、化学肥料や農薬の乱用によって、放線菌の数も激減の途を辿っているのです。
昔、農薬や化学肥料があまり使われなかったころ、収量のほうも多くは穫れなかったけど病害も少なかったと思います。これは無意識のうちに土の中の生態系がバランスよく整っていたために違いありません。
私は家畜の糞は一切使わないことを申し上げましたが、今の家畜の糞は有害物質が極めて多く含んでいます。例えば豚がいますが、早く商品化するために、沢山の薬品(抗生物質)が飼料の中に混和されているのです。
薬品は大半がそのまま糞と一緒に排出されますから、当然それを堆厩肥として土壌に施用されれば土壌中に有害物質が残ってしまいます。もしその有害物質の中に発ガン性の物質が含まれていたとすれば、考えただけでゾーっとしてきます。
私の「有機微生物農法」では、放線菌の増殖を図るために、カニ殻、骨粉、菜種粕を多施します。ご存知の方もいると思いますが、放線菌はキチンが大好物です。
カニ殻にはキチンが多量含まれていますから、微生物農法をやる上でカニ殻施用は不可欠の条件となります。微生物農法にとり組んでから私は既に十年余経過しましたが、病害の発生も極めて少なくなりました。
田んぼの他に畑も少々ありますので自家用にする量の野菜も数種類作っておりますが、連作障害もほとんどなく病害の消毒も行なう必要がありません。
そればかりか家で穫れた野菜を食べてからは買った野菜は食べられないぐらいです。(柔かさ、甘さなど)今年(1993年)の東北地方の稲作は記録的な大冷害に見舞われました。
山形県でも東風をまともに受ける地域と標高の高い山間地帯のイネは穂が立ったままの「実らぬイネ」が出現しました。・・・・・・自家用にするコメも穫れない農家だってあるのです。
幸い私の地域は平坦なので被害も少なかったんですが、それでも個人差が生じました。私共の有機微生物農法のグループのイネは、こんな年でも穂の熟色が本当に鮮やかで、畦一本隔てて隣の人の田んぼのイネと比べると、同じ品種なのにまるで違った品種でもあるかの如く、きれいな色艶をしています。
以上、今回は有機徴生物農法についての紹介と優越性を述べましたが、専門筋からの誤解等を招くといけませんので、最後に一筆付け加えさせてもらいむすびます。
まず①、カニ殻などを施用するだけで病害の発生や気象災害を克服できるものでは決してありません。
②、微生物の増殖をはかっていくためには常に自分の田畑の状態を把握して、微生物の繁殖に適した環境づくりをすることが何よりも肝要です。
③、微生物の世界は常にめまぐるしく変動しています。
④、作物づくりには各々の作物に相応した栽培体系(これが基本技術になります) をすることが肝要で、放線菌の応用がオールマイティの技術では決してありません。
(出典:「キチン・キトサン協会誌」VOL.12より)
力ニ殻農法で安全な食物づくりを ~キチン・キトサン協会会員 赤松勇一
①稲作への力ニ殻(キチン・キトサン)の応用 ②ポストハーベストのはなし ③作物はなぜ病気に罹るのか
④温醸醗酵について ⑤コメづくりの基本として ⑥私のイネづくりのやり方
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