機能性食品が国を救う~キトサン講座
2015年4月、日本で健康食品の機能性表示制度が開始された。この制度は米国で1994年に施行されたDSHEA法(栄養補助食品教育法案)を参考にしたもの。当時のクリントン政権が高騰する医療費の削減のために健康食品の販売規制を一部緩和した。20年後、ようやく日本でもこうした制度が取り入れられ、健康食品の役割が見直されることとなった。期待される健康食品の機能性、各国の表示の潮流を探る。(「キチン・キトサン協会誌」Vol.33~34より)
漢方医薬新聞・主幹
健康・栄養食品辞典・編集長 長谷川佳哉
健康・栄養食品辞典・編集長 長谷川佳哉
機能性食品、キチン・キトサンにかける期待 / 機能性食品で、医療費削減に取り組む / 世界各国の医療の自然志向、機能性食品への傾斜(ヨー口ッパにも自然志向の波、日本医学の師ドイツ・エルバリ(ハーブ薬店)の伝統国フランス・自然療法の盛んなイギリスを王室が積極的にリード・中国でも「保健食品」が誕生し法制化) / アメリカでの機能性食品による経済効果
機能性食品、キチン・キトサンにかける期待
医療費の高騰は、このまま放置すれば日本経済を破産に追い込む事は明らかである。しかし政府は一向に有効な手を打っていない。基本的な政策を立てていないのである。小手先で当面する難局を乗り切ろうと取敢えずは赤字を国民に肩代わりさせようとしている。しかし、それでは何の解決にもならない。
肝心な事は、医療費を少しでも削る為に手を打つ算段をする事である。
その第1 は人々が病気にならない様な生活をするようにお膳立てをする事である。基本は医療そのものよりも" ライフスタイル"である。毎日の"食"である。
もちろん、手足を動かす事も大切であり、気持ちをリラックスさせる事も生命活性に欠かせない。しかし、それにも「食」のあり方がかかわっている事を知らなければならない。
第2は、医療の治療にかかわる薬をできるだけ少なくする事である。それに代わるものに機能性食品を取り入れる事だ。免疫・ホメオシステスの自癒の医学を目指すべきだ。
機能性食品は、治療素材としてばかりではなく未病を治すエースでもある。更にライフスタイルともいうべき、日常生活の中心に据えておくべきである。そうする事で人々が医者にかかる回数は確実に半減する事になる。
現に機能性食品(これはキチン・キトサンでなく霊芝だが)を熊本市で2,000 人が毎日飲み、食べた結果を1 年間追跡して、医者にかかる率が半減したというデータがある。(漢方医薬新聞204号)
恐らく、キチン・キトサンで同様のデータを取れば、これ以上の数字が出るのではなかろうか。
機能性食品で、医療費削減に取り組む
アメリカの機能性食品(栄養補助食品)に関する法律「栄養表示教育法」の全面改正が行われたのは1990年(平成2年)11月(法成立)で、実施されたのは1994年である。アメリカではこの「栄養表示教育法」の全面改正によって、食品でもない、薬品でもない「栄養補助食品J を認めたのである。即ち、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、植物成分、繊維等の成分や機能性を正式に認めて定義づけた。日陰者であった身が晴れて法律で認められたのである。
この成立に対し、クリントン大統領は喜びを込めて次の様に声明を出した。「長年に及ぶこの法律の為の草の根レベルの運動が議会を動かして、消費者及び製造業者、栄養専門家、そして法案立案者による真剣な提携活動が、栄養補助食品を常識的な規則と法律の制定にまで結びつけた。」 クリントン氏は常識が法律化されたと言っているのである。
アメリカはこの新改正法の出現より「栄養補助食品局」を設立した。この法律改正案の提案理由の中に「健康的な食べ物が、高価な治療法、例えば心臓のバイパス手術や移植手術等の必要性を減らす事ができる」という項目があるのも見逃せない。
世界各国の医療の自然志向、機能性食品への傾斜
現代ほど医療の信頼が損なわれている時代はない。それは取りも直さず医師への不信となっている。その根は次第に深まっている。そこに薬の問題が絡んで一層不信感が増大している。◎ヨー口ッパにも自然志向の波、日本医学の師ドイツ
ヨーロッパにも薬から食への強い流れがある。ドイツを例にその流れをみてみよう。ドイツは日本にとって西洋医学の師であった。
明治維新は日本古来の漢方医学を抹殺して西洋医学に置き換えたが、その手本をドイツに求めたのは知られている。そのドイツ国民が今は自然志向を大きく打ち出している。
ドイツ・ミュンへン大学医学部のH . レーベンウェーバ一氏は、平成8年2月北里研究所東洋医学総合研究所で行われた「WHO指定研究協力センター10周年記念」の講演でドイツの医学状況と自然志向について次の様に述べている。
「1970年代に高度文明社会の欠点が多くなるにつれて、自然主義の考え方が広まった。それに伴って、医学の分野でも、自然療法に目を向ける様になった。
最近の世論調査によると、ドイツでは人口の約90 % が「現代医学の治療よりも、むしろ自然療法を選びたい」と答えた。ドイツの自然療法には、現在、100種類以上の治療方法があるが、最も普及しているのは植物療法である。その他ホメオパシー、物理療法、中国鍼である。
1991 年から、ドイツの科学技術省は、自然療法に関する研究を推進する事を始めた。また自然療法は医師国家試験の受験科目のーつとなっており、それに伴ってドイツの大学の医学部では植物療法が講義科目となっている。
ドイツにおける「植物療法」とはハーブ及び日本の機能性食品が中心である。例えば、日本の機能性食品であるイチョウ葉エキス等は医薬品として植物療法の大きな比重を占めている。
◎エルバリ(ハーブ薬店)の伝統国フランス
フランスも、ドイツに劣らず自然志向が高まっている。私は1994年にフランスを訪れ、日本人が多く訪れるパリの「アメリカンホスピタル のドクター・フュ・マツシタ氏( M.D ) を訪れ、フランスにおける伝統医学面の現状を取材したが、フランスにおける自然志向は「エルバリ」 (ハーブ薬店)の伝統もあり、民間伝承薬の長い歴史がある事を知った。
また、ホメオバティには強い関心があり「日本ではどうか」と逆取材を受けた。フランスはドイツと共に、東洋医学に最も深い理解を示し、中国鍼を中心に医療面で実践している国である。
◎自然療法の盛んなイギリスを王室が積極的にリード
イギリスの自然療法は、イギリス王室が積極的にリードしている。ガン療法の一つに「ゲルソン療法」というのがあり、アメリカと共に英国で盛んに行われている。
これは「B C H C (プリストル・キャンサー・ヘルプ・センターの略)療法」 とも言われる。肉食をせず新鮮な生鮮食をとる全人的食事療法であるが、イギリス皇太子のチャールズ氏がこのB C H C療法を積極的に推進している。
またエリザベス女王も、ヨーロッパの伝統医療である「ホメオパシー」の名誉総裁としてオルタナティブ医学(代替医療)を支えている。
◎中国でも「保健食品」が誕生し法制化
中国の機能制食品は「保健食品」と呼ばれ、1995年10 月に「中華人民共和国食品衛生法」として公布された。保健食品はその中の22条、23 条に明記されている。それは明らかに食品ではなく、薬品でもない「特定な保健機能があると表記した食品」である。
1996年、中国食品衛生監督検査所の発表によれば、1996年現在、中国には約9,000種の「保健食品」が出回っているという。これらは「保健食品」 あるいは「自然保健食品」と明記されて販売されている。
認可は各省の薬政局が行ってきたが、統一基準がなく、野放しの形になっており、効能に対する疑問の声も上がり始めていた。それを管理する意味もあり、「食品衛生法」に基づいて「保健食品衛生管理規則」(1996年6月1日施行)が生まれ、具体的な取締り体制に入った。
その意図はアメリカとは異なり、日本に近い「取締り」形である。それともう一つ中国もアメリカ同様、高騰する医療費の抑制もあるが、それより保健用食品の国際的な信用を高めて、国際的な商品販売戦略に十分堪えられるものにしようとする経済的輸出政策が根底にある事は明白である。
アメリカでの機能性食品による経済効果
ヨーロッパの伝統的で地道な自然志向と比較すると、アメリカの機能性食品(アメリカでは栄養補助食品=サプリメントというので以下サプリメントと呼称)は極めてダイナミックに動いている。
これは日本が今後大いに学ぶべき道で、アメリカのサプリメントは医療費削減を目的としている。アメリカは1990年に「栄養表示・教育法(Nutrition Labe1ing and Education Act of 1990 :NLEA) 」を制定した。これは、医薬品と食品の中間に位置付ける新しい「栄養補助食品」を認知した、画期的な出来事である。
この「栄養表示・教育法」の目的は、アメリカ国民の健康維持増進が主目的で、これにより米国の医療費を削減する、という効果を狙ったのは、クリントン大統領の声明でも明らかである。
そして、その後の「経済活性効果」を狙った1994年の「米国栄養補助食品・健康・教育法(DSHEA:The Dietary Supp1ement Health and Education Act of1994)」の施行である。
これは全13 条から成るが、この中の第2 条で、はっきりと経済効果を示唆した項目がある。医療費と絡めて実にダイナミックである。
アメリカは一旦決まると広がるのも早い。栄養食品メーカー数、売上高は1994年の法律制定時よりも4 割程度アップし、輸出高も、日本・アジアを中心に大幅に伸びた。巨大な健康産業を目指してアメリカは大きく羽ばたいているのである。
この様に各国とも形は様々だが「食」の機能性に対する世界の認識が高まっている。