キトサンの機能性
~健康作りから土壌改良まで多彩!
キトサンの有用性が次々に明らかになりつつあります。人々の健康作りから土壌改良まで幅広い用途が期待できるキトサン。カニ殻との出会いから、その機能性まで福地 知行氏(静岡県立大学薬学部名誉教授・工学博士、中央薬事審議会委員)が語る。
キチン・キトサンの有用性~福地 知行(静岡県立大学薬学部名誉教授・工学博士、中央薬事審議会委員)
キチン・キトサンの有用性~福地 知行(静岡県立大学薬学部名誉教授・工学博士、中央薬事審議会委員)
キチン・キトサン協会副理事長 福地 知行
静岡県立大学薬学部名誉教授・工学博士
中央薬事審議会委員
静岡県立大学薬学部名誉教授・工学博士
中央薬事審議会委員
キトサン、免疫賦活作用が大きい
今から数十年前のことですが、日本海のある港の漁業協同組合の組合長さんから、「カニの殻が多くて困っている。何とかならないものか」と相談を受けたのがカニ殻との出会いでした。しかし、残念ながら深く追及することはしませんでした。
ただ、慢然とカニ殻が山中に捨てられ埋められているのをみて肥料にならないかと考えたくらいでした。
当時、私はカニ殻が埋められるより、魚の腸等と共に捨てられる間の悪臭をどうにかすることに集中し、どうすればこの悪臭を退治することが出来るかを科学的に究明し、その対策も完成させていました。
しかし埋められた後の状態をもう少し注意深く観察していればカニ殻の農業用の利用に気がついたかも知れません。
さて、このカニ殻は、その後数多くの大学の研究室で取り上げられて研究されました。また民間の会社の研究所などでも同様に研究の対象となりました。
そして、このカニ殻の中にキチンとかキトサンといわれる有効成分が含まれていることが明らかになり、さらにその含有量が他の試料(実験材料)に比べて極めて多いことが次第に分かって参りました。
さらに、これらは天然にはキノコなどに含まれているということは分かっていたのですが、カニ殻には先に述べたように今まで知られていたものより極めて多量に含まれていることが明らかになったのです。
キチン・キトサンは機能的な食品の素材として種々の利用法が試みられ、鳥取大学の平野茂博教授によれば15種類もの利用方法があることが明らかにされています。
このうち既に工業化され、極めて有用的に使われているものもあります。保水剤としての利用は有名です。そして、数々の大学での動物実験の結果から医学的に大きく利用されるであろうことが示唆されています。
北海道大学の東市郎教授や東北薬科大学の鈴木茂生教授の研究によると、キチン・キトサンは免疫の働きを高める免疫賦活作用が大きく、従来の抗腫瘍効果と一味違ったものが見られたということです。
さらに、キチン・キトサンには毒性が少ないことも併せて明らかにされました。
コレステロール低下作用や土壌改良も
このようにキチン・キトサンは人聞の健康と密接に関係があります。そして、その最大の特徴はキチン・キトサンは食物繊維であるということです。
食物繊維は人間の体内に入ると、人間の消化管(食べ物の通る管)の中で効果的に働き、老化を抑制し、腸の中で有用な腸内細菌(ビフィズス菌等)の増加を促進し、便通を整えます。
その結果として結腸とか直腸に発生するいわゆる大腸ガンの発生を予防すると東京理科大学の石倉俊治教授はその著書の中で説明しておられます。
病原の発生を予防するという作用は考えてみると大変な作用なのです。一般に医薬品というものをよく考えると、いわゆる病気になってから、その病気に対して治療するために使うのが通常で、対処療法ですが、これを予防するということになると大変な効果であると考えなければなりません。
キチン・キトサンもこの食物繊維の一種で、かつ別の研究では今までの医薬品とは一味違った働きをすることも明らかなわけですから大変なことなのです。
さらに老化を抑制する働きについては、九州大学の菅野道廣教授の動物実験の結果として、コレステロールを低下させる効果があることが報告されています。
コレステロールは成人病といわれる循環器系の病気と密接な関係がありますので、この面からみても人間の健康との関わりが大きいのではないかと思います。
以上のような実験結果とその考察から考えて、キチン・キトサンはさらに研究が進められて、人間の人生に大きな役割を果す医薬品が開発されて来るような気がします。
さらにキチン・キトサンは人命に直接的な関わり合いがあるばかりでなく、農業面でも土壌との関係において、キチン・キトサンを施用した農地に生育する作物が、食料の面から考えても極めて有効で、有利な点の多い作物が得られることが実験的にも実証されています。
以上、キチン・キトサンは現状においても、また将来を展望しても素晴らしいものであることが次第に明らかになっているといえるのではないでしょうか。
(出典:「キチン・キトサン協会誌」VOL.4より)