力ニ殻農法で安全な食物づくりを⑥
私のイネづくりのやり方
キチン・キトサン協会会員 赤松勇一
「無理せず、無駄なく、無難に」を常に心がけて
アメリカやオーストラリアのイネづくりは、本田に直接タネ籾を播く直播方式によって行われていますが、我が日本では依然としてまず苗代をつくりそれから本田へ移植する方式(田植え)でもって行われています。その田植え作業も昔は手植えだったのが田植機の発明によって今は100 %機械移植になりました。我々農家にとっては労力的には本当に楽になりましたが、反面金もかかるようになってきたことを申し上げましてから、以下私のイネづくりのやり方を記述してまいります。
特に機械田植えになってからですが、私はイネの一生を次の4 つの生育段階に分けて考え技術対応を講じています。
第l 段階は苗代の時期です。
もちろん健苗を育てることに努力いたしておりますが、一般の人と違うところは、私の苗は成苗( 5葉苗)だという点です。
それに私は種子消毒として浸漬2 日目にホルマリン50培液を使用しますが、全苗代期間を通して薬剤の使用はこれ一回だということです( 他の人達は少ない人でも最低3 回はやっているはずです) 田植機イナ作は育苗箱にタネを播きますが、私は床上の中にキトサンを混和しています。
また、芽出しするとき直前にキトサンをソース状に溶かした液にタネ籾を入れコーテイング(風乾する)をいたしますと芽ぞろいが良くなります。
育苗期間中( 40 日間)は追肥も3~5 回行いますが、そのつど希釈したキトサン溶液を添加しています。第2 段階は田植えから穂首分化期(穂の出る約1 ヶ月前)までのいわゆる栄養生長期間です。
本田の元肥として私は田起こし直前にカニ殻、骨粉、菜種粕等有機質資材を施肥しておりますが、更に、数日後砕土を兼ねて2 回目の耕起をいたします。これは放線菌等好気性微生物の繁殖を促進せんが為にやっていることで肥料の効率を高める一つの手段でもあります。
第2 段階のイネは体をつくる時期なので、『無理せず、無駄なく、無難に』を常に心がけ決して生育過多にならないように管理することが大事です。
イネの生長と比例して土壌の変化(酸化→還元)も進んできます。有害な塩素等の集積も顕著に出てまいります。第3 段階の生殖生長期にスムーズに移行出来るよう肥培管理をしてやるのがイネ技術になるわけです。
私は出穂約45~ 48日前に石膏を含んだリンサン肥料を施肥しリンサン吸収型の活力あるイネに育つように努めています。それからこの時期での作業として、第3 段階、第4 段階での水管理をスムーズにコントロールするために圃場の中に数本の作溝(濯排水溝)を堀る仕事があります。
第3 段階は穂首分化期(穂の出る約30日前ごろ)から出穂期までの期間です。私は穂首分化期のイネの姿でおおよその収量判断が出来るような気さえしています。
でんぷんの生成は光合成作用と大きな関わりを持つものなので当然イネの姿をどうこしらえるかが大変重要になるわけです。葉先が力強く天を向き株が扇状に開張していることが最も理想的ですが、一般の人のイネはこの頃は分けつが過剰気味で薬剤(2 .4- D など)による生育調節が行われています。
ここでぜひ皆さんに知ってもらいたいのは2 .4 -D等生育調節に使用される薬剤はホルモン剤であって発ガン性物質でもあるという事をです。
出穂22~ 24 日前項になったら穂肥をいれますが、私の場合この時の施肥もカニ殻、骨粉、菜種粕で固めた有期質肥料を使用しています。化学肥料のように極端な肥効の波が出ないので後半での生育の乱れも感じられません。
第3 段階での水管理は作溝水といいまして随時作溝の中だけに水を流しいつでも土が土の色を呈していることを心がけるよう努めています。(白乾状態にしてはあまりうまくありません)第4 段階は出穂期以後登熟期間中です。イネは出穂するとすぐ開花しますが、開花後は5~ 6 日でまず玄米の長さが決まります。
ついで11~ 1 2 日間で玄米の幅が決まって、15 ~16 日目ごろまでに厚みが決まってまいります。出穂するということは、人間にたとえると女性が出産するのと同じに考えてもらえばいいわけで、出穂後2 0 日間位は人間の産褥期なのです。
水管理が最も重要で前述の作溝水が一番理想的と思います。登熟期間に天候がすこぶる良い年には光合成作用も旺盛ですから、当然、イネ体の新陳代謝もそれだけ激しいので栄養的凋落を防ぐ意味からも適量の施肥が必要になってきます。
この場合の肥料も前述の有機質肥科が最も相応しいと思います。ただ近年のイネづくりのやり方をみてみると何から何まですべてスケジュールに沿った農法なのでよほど注意しないといけませんが、昨年のように天候の良くない年に肥料をやれば実りが悪くなるのはもちろんのこと病気(イモチ病)の誘発にもつながってきますから絶体に避けなければなりません。
最後に、私は安全で美味しいコメをつくって皆様に食べてもらうことをモットーに肥料から水管理等には常に気を配ってイネづくりに精を出しておりますが、どうか皆様もカニ殻施用に始まる微生物応用の私の農法をよく理解して下さいまして、出来るだけ安全なコメや農作物を消費して下さるよう切に祈念してペンを置かせていただきます。
(出典:「キチン・キトサン協会誌」VOL.17より)
力ニ殻農法で安全な食物づくりを ~キチン・キトサン協会会員 赤松勇一
①稲作への力ニ殻(キチン・キトサン)の応用 ②ポストハーベストのはなし ③作物はなぜ病気に罹るのか
④温醸醗酵について ⑤コメづくりの基本として ⑥私のイネづくりのやり方
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