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ガンになるとなぜやせる~キトサン講座

ガンになると体重が急激に減っていきます。これはガン細胞から出る毒素、トキソホルモンが関係しています。キトサンが腸管内でキトサナーゼによって分解されて生じたグルコサミンが、トキソホルモンの作用を阻害する働きが認められています。(「キチン・キトサン協会誌」Vol.20より)

愛媛大学医学部医化学第2教室 教授
和漢医薬学会会長 医学博士 奥田拓道

ガン細胞から毒素、トキソホルモンが分泌 / ガン細胞から分泌され、脂肪細胞の分解を促す毒素 / キトサン、腸管内でグルコサミンになりガン毒素の作用を阻害

ガン細胞から毒素、トキソホルモンが分泌

体にガンができると、以前と比べて生活はそれ程変っていないのに1 ヶ月に3キロも5 キロも体重が急に減ってきます。ガン以外のでき物が体にできても、こんなに急激に体重が減ることはないのに、一体なぜガンではやせるのでしょうか。

また、ガン患者がキチン・キトサンを飲むことによって、食欲不振が良くなったり、体重の低下がある程度くい止められるといわれています。もしそれが本当なら、一体どんな仕組でキチン・キトサンはガン患者のやせをくい止めているのでしょうか。

体にガンができると、ガン細胞から色んな毒素が出ることは良く知られています。ガン細胞から出されるこの様な毒素は、一般にトキソホルモンと呼ばれています。

トキソとは毒という意味であり、従ってトキソホルモンとは毒ホルモンということになります。ガン細胞からトキソホルモンが分泌されるのを最初に発見したのは、米国のグリーンシュタインという学者です。大東亜戦争の始まった昭和16年のことです。

彼は健康なネズミのしっぽにガンを植えると肝臓のカタラーゼという酵素が低下することを発見しました。

ところがネズミのしっぽにあるガンを切除すると、肝臓のカタラーゼは正常に戻るのです。これはガン細胞から毒素が分泌され、それが血液を介して肝臓に至り、カタラーゼを低下させていることを推測させる事実です。



ガン細胞から分泌され、脂肪細胞の分解を促す毒素

昭和20年8 月1 5 日の敗戦でうちひしがれた日本人の中で、駒込の癌研究所長であった中原和郎博士は、いち早くグリーンシュタインの論文に注目し、福岡文子博士と共に直ちに実験を開始しました。

手術で切りとられた胃ガンに水を加え、鍋でぐつぐつ煮て水抽出液をつくった所、この中にカタラーゼを低下させる毒素があることをつきとめたのです。彼らは、この毒素をトキソホルモンと名付けました。

その後、貧血を起こす毒素や免疫能を低下させる毒素が発見されましたが、ガン患者を急激にやせさせる毒素については全く知られていませんでした。

約10年程前に、たまたま肝臓ガンの患者さんから取った腹水を脂肪細胞に作用させる実験をしていました。脂肪細胞とは、私達の皮下や内臓に豊富にあり、脂肪をため込む細胞です。

脂肪をため込んでこの細胞がふくれてくると肥満になり、ダイエットや運動で脂肪が分解し、外に出て行き細胞が縮んでくるのがやせです。驚いたことには、肝臓ガン患者の腹水を脂肪細胞に作用させると、脂肪の分解が始まったのです。

これは全く予想もしていない出来事でした。肝臓ガンばかりでなく、腎臓ガン、悪性卵巣腫瘍の患者さんの腹水や肺ガン患者の胸水でも、同じように脂肪の分解が促されている。

しかし、ガンではない肝硬変や腹膜炎の患者さんの腹水では脂肪の分解は全く起こりません。つまりガン患者の腹水や胸水には、ガン細胞から分泌され脂肪細胞での脂肪の分解を促すやせさせる毒素があるのです。私達はこの毒素をトキソホルモンーL と名付けました。

L は脂肪分解(Lipolysis) の頭文字をとったものです。このやせさせるガン毒素( トキソホルモンーL ) を肝臓ガン患者の腹水から取り出したところ、分子量約7 万のタンパク質であることが判りました。

キトサン、腸管内でグルコサミンになりガン毒素の作用を阻害

このトキソホルモンーL をほんの少量( 14 ミクログラム)ネズミの第3 脳室に注入するとエサを食べなくなるのです。一般に食欲は、脳の視床下部にある満腹を感じる場所(満腹中枢)と空腹を感じる場所(空腹中枢)で調節されているといわれています。

満腹中枢の機能が高まっても、逆に空腹中枢の機能が低下しても、いずれも食欲不振が起こるのですが、トキソホルモンーL による食欲不振は、満腹中枢の機能が高まることによって引き起こされていることが判りました。つまり、ガン患者の食欲不振は、いつも満腹状態にあるために出現したものなのです。

このように、ガン細胞から分泌されるトキソホルモンーL は、脂肪細胞に作用して現在たまっている脂肪を分解すると同時に、満腹中枢に作用して食欲不振をもたらすという二つの作用で、ガン患者の急激なやせが起こると考えられます。

このようにみてくると、もしキチン・キトサンがこのトキソホルモンーL の作用を阻害するなら、ガン患者のやせや食欲不振が改善される可能性があります。

残念ながらキチン・キトサン自身には、そのような阻害作用は認められませんでした。しかし、キチン・キトサンのうち、キトサンが腸管内でキトサナーゼによって分解されて生じたグルコサミンには、トキソホルモンーL の作用を阻害する働きが認められました。

つまり、ガンの患者さんがキチン・キトサンを飲むと、野菜、果物、腸内細菌由来のキトサナーゼによって分解され生じたグルコサミンが、トキソホルモンーL を阻害して、やせや食欲不振を改善することが期待されるのです。


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