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力ニ殻農法で安全な食物づくりを⑤
コメづくりの基本として


キチン・キトサン協会会員 赤松勇一

カニ殻等の有機質資材を温醸醗酵させて田んぼへ投入

昨年の希代な冷害凶作から端を発して、正に「平成コメ騒動」と名付けられる如く今もって日本国中がコメをめぐって大きく揺れ動いています。

私は拙著単行本「有機微生物農法による健康イネづくり」全国農業会議所より昭和62年12月出版) 誌中にイネづくりをするにあたっての心構えを10項目にわたって掲げております。

そしてその序論に『現在の手抜きイナ作に思う』というタイトルをつけ、昭和40年代と昭和60年代のイナ作技術の変化を並記いたしました。

どんなことかと申しますと、昭和40年代のイナ作技術は品種選びから栽培の方式すべてが防災型農法であったのに対し、60年代(現在) のイナ作は何からなにまでスケジュールに従順するやり方であり、正に手抜き農法そのものであるということです。

文中(誌中) で私は『今日まで(62年まで) 幸にして冷害らしき冷害の襲来にみまわれていないので、現在の技術体系( 手抜き農法)でもとりたてての欠陥がでてこないが、40 年代の防災農法イナ作にくらべると、すべての面で災害( とくに冷害) に対しての抵抗力が低下しているから極めて危険な状態にあると思う。』と強調しているのです。

天候は毎年違います。天気予報を参考にしながら最悪状態の天候を想定してそのつど作物(イネ)に対して適切なる対応技術を講ずることが何よりも大切であると思います。

私のイネづくりは微生物学的見地から土づくりを実行し、有効微生物の増殖をはかることによって土の化学性(物理性に対しての化学性です)を改善することから出発いたしますが、私は前号で記述したようにカニ殻をはじめ骨粉や菜種粕等の有機質資材を温醸醗酵させてから田んぼへ投入(施肥) しています。

化学肥料連用の田んぼの土と比べてみますと肥料の分解成分*が大きく違っています。(*分解成分とは、人為的に三要素成分を施用しなくても土の中の微生物によって潜在地力として存在する養成分が有効化しチッソ、リン酸、カリ他の成分が吸収されてくること)もちろん有機質肥料連用の土壌ほど分解成分が高く現れる事はいうまでもありません。

・・・ところで家畜の糞尿も有機質資材の一種ですが、私は家畜の糞尿は一切使用しておりません。その理由は本誌VOL.13で記述したとおりです。

また、皆さんに知ってもらいたいのは、いくら優良の有機質資材だからといっても一度に多量投入は無駄であるばかりか効果も少ないものです。

適量ずつ永年に亘って連用してこそはじめて土づくりが出来るのです。余計な話ですが有機栽培と表示された作物でも普通に栽培した作物より味も見栄えも悠かに劣るものだって沢山あります。

家畜の糞等は二次汚染の心配だってあります。それはそうとこれまでは、土づくりだけを重要視して記述してきましたが、昨年の冷害凶作とも照らし合わせて見つめてみますと、作物(イネ) は土にいくら養分があったとしても光が不足していると養分の吸収が十分におこなわれなくなるということです。

ご存知のように作物は炭酸同化作用を営んでいます。炭酸同化作用は一名光合成作用とも呼ばれてまして、太陽光線のエネルギーが植物体の葉緑素にとらえられ、気孔を通じて入った炭酸ガスと根から吸収された水とから植物体の主要部分となる炭水化物(でんぷん) をつくりだしているのです。

昨年の冷害はたまたま穂が形成される時期に光が不足したために十分な光合成作用が営なまれなかった事が最大の原因なのですが、これが昭和40年代でしたら大幅に被害を食い止められたはずと思っています。

私のイネづくりを評して関係者は「革新技術」呼ばわりしているようですが、決してそうではありませんで、私は以前からのイネづくりを忠実に守ってやっているだけです。次回に詳しく栽培方法を記述いたしますが、近年のイネづくりはあまりにも型にはまり過ぎの気がいたします。

例えば田んぼの耕起にしても一般的には田を起こせばいいと思っている農家がほとんどです。私は微生物応用のイネづくりをするよになってからは必ず耕起は2 回以上(砕土を兼ねて) やっています。

何故ならば・・・微生物( この場合は放線菌等の好気性菌) の活動に適した環境づくりをしてやるためが目的だからです。水田の場合には畑と違って2 サイクルの微生物の活動が行われます。

つまり、カニ殻などを施用後耕起をし(1回目) さらに砕土(2回目) をいたしますと放線菌をはじめとする好気性微生物が活動をはじめます。

餌を摂取して爆発的に増殖しますが、今度は田んぼに水を入れますと急激な環境の変化で好気性微生物にかわって嫌気性微生物が活動をはじめてまいります。

畑状態の土壌に湛水をしますと地力チッソが有効化してでてきます。これを乾土効果といいますが、すべて微生物が関与しています。乾土効果としてでてきたチッソ成分は前述の分解成分と正比例の関係があり、イネの生育とも密接な関係があります。

一般的には有機質肥料は肥効が緩やかということになっていますが、微生物の応用のしかた次第で、速効性にも緩効性にもコントロールできるものなのです。


(出典:「キチン・キトサン協会誌」VOL.16より)


力ニ殻農法で安全な食物づくりを ~キチン・キトサン協会会員 赤松勇一
①稲作への力ニ殻(キチン・キトサン)の応用 ②ポストハーベストのはなし ③作物はなぜ病気に罹るのか
④温醸醗酵について ⑤コメづくりの基本として ⑥私のイネづくりのやり方

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