キトサンと肥満の関係
愛媛大学医学部医化学第2教室 教授
医学博士 奥田拓道
医学博士 奥田拓道
■ キトサンの分解物、インスリンの分泌を増加
今回はキトサンと肥満の関係のお話です。 キチン・キトサンを食べると、腸の中で、キチナーゼ、リゾチーム、キトサナーゼの作用をうけて、一部が分解され、アセチルグルコサミンやグルコサミンになります。
ところで、アセチルグルコサミンやグルコサミンをネズミ(ラット)に経口投与すると、食欲が出て、摂食量がふえることがわかったのです。この食欲の増加は、肝臓を支配している迷走神経を切断すると消失します。
つまりキチン・キトサンの分解によって、腸管内に生じたアセチルグルコサミンやグルコサミンは、吸収され、門脈を通って肝臓に達します。
次に、肝臓に分布している迷走神経の末端がこれらの物質によって刺激され、その刺激が求心性(上行性)にその中枢である空腹中枢に達します。
迷走神経は、副交感神経の一部ですが、空腹中枢の刺激によって、空腹感が出現すると同時に、副交感神経全体が興奮することになります。副交感神経の興奮によって、膵臓のβー細胞からインスリンの分泌が増加します。
インスリンは、体内の脂肪を増やし、太らせるホルモンです。肥満とは、体重に占める脂肪の割合が増加する状態を言います。普通、脂肪は、体重の20%前後ですが、それが25%、30%と増加するのが肥満です。体重が多いのは必ずしも肥満ではありません。
■ 肥満とは、体重に占める脂肪の割合
肥満とは、体重に占める脂肪の割合ですから、体重50kgで肥満であったり、100kgで肥満でなかったりします。私達の目は、体重ではなく、脂肪の割合をみて太っているかどうかを判断しているのです。なぜ、そんなことができるのでしょうか。脂肪は目に見えない内臓にもたまりますが、目に見える、あご、上腕、おなか、腰、下肢の皮下などにふえて、顔つきや体型を変えます。それを見て肥満を判断しているのです。脂肪は皮下などの脂肪組織にある脂肪細胞の中に溜まります。
細胞の外にあるのではなく、生きた細胞の中に閉じ込められて存在しているのです。この脂肪は、食事の中にある油がそのまま溜まっているのではなく、脂肪細胞自身がつくったものなのです。
脂肪細胞が脂肪をつくる際の材料は、血液中の血糖とリポタンパクです。脂肪はグリセロールに3つの脂肪酸が結合したものですが、血糖からは、グ リセロール脂肪酸の両方がつくられます。
一方、リポタンパク(この場合は、カイロミクロンやVLDL と呼ばれるものですが)からは脂肪酸だけが供給されます。つまり血糖がなければ、脂肪をつくることができないのです。この血糖を脂肪細胞に送り込む働きをするのがインスリンなのです。
■ キトサン、肥満を助長それとも解消?
キチン・キトサンの分解で生じたアセチルグルコサミンやグルコサミンが空腹感を引き起こすと、ものを食べるようになり血糖やリボタンパク(この場合はカイロミクロン)が血液中にふえます。
一方、副交感神経の興奮で血液中に高まったインスリンが血糖の脂肪細胞への取り込みを促進して脂肪の合成を高めるのです。このようにみてくると、キチン・キトサンを食べると太ることになりそうです。しかし、最近そうともいえない実験成績がでてきました。グルコサミンを食べると食欲がでてくるのは、まぎれもない事実ですが、グルコサミンが2 つ連なったグルコサミンダイマーや3つ連なったグルコサミントリマーは、食欲を抑制することがわかったのです。
キチン・キトサンをたべると腸管内で、グルコサミンばかりでなく、そのダイマーやトリマーができる可能性があります。 このようにキチン・キトサンは肥満を助長する可能性と解消する可能性を持っているというわけです。
■ 認知機構の乱れを正す
そのため、肥満に関しては、キチン・キトサン以外の何かに頼らざるを得ませんが、その「何か」とは認知機構の乱れを正すことです。例えば、太った人に「夕べは何を食べたの」と聞いても答えられないのに驚かされます。太っている人は無意識のうちに食事をしたり、間食をしたりするのです。 テレビを見ながらの"ながら食い"嫌なことを忘れようとする"気晴らし食い"などがそれです。これが認知機構の乱れです。
もっと正確に乱れを知る方法があります。太っている人にストップウォッチを渡し時計の針を見ないようにして5秒経ったと思ったら止めてくださいといいます。
当然、正確な5秒との間にはずれがありますが、このズレがやせた人に比べて太っている人の場合大きいのです。 この認知機構の乱れを正す方法として、毎日の食事のカロリ一計算をして一定のカロリー内に留める努力をするとか、朝食前後、夕食前後、就寝前の5回体重を測定し、グラフ化する方法などが提唱されています。
このようにして、この日の就寝前の体重はどうしてこんなに上がったのだろうかと反省することで認知機構の乱れが正されていきます。
● カニ殻キチン質、キチン・キトサン学術報告
キトサンとダイエット①
やせる仕組み、ホルモン感性基質説 / キチン・キトサン+ラクトスクロース、肥満予防や治療の可能性 / キチン・キトサン、太る・痩せるの両面 / キチン・キトサン+ラクトクロースによる肥満予防実験 / ラクトスクロース単独でも著明なやせ
キトサンとダイエット②
脂肪はとても危険な物質 / 食事由来の脂肪が体内で溜まる仕組み / キチン・キトサンとラクトスクロースで脂肪肝が改善 / 脂肪を作る材料は、血糖とリポタンパク / よく噛んで食べると、満腹中枢が刺激され食べる量が減る
キトサンとダイエット③
キチン・キトサンとラクトスクロースの抗肥満作用 / キチン・キトサン、肥満予防の仕組み / キチン・キトサン、脂肪だけ腸管吸収を抑制 / キチン・キトサン、脂肪の分解を阻害
キトサンとダイエット④
生きた動物で起る現象を試験管の中で再現 / ラクトスクロースによるβ-モノグリセリドの腸管吸収阻害 / β -モノグリセリド、肥満との関係 / β -モノグリセリドの役割 / β-モノグリセリド、脂肪の再合成に重要な働き / キチン・キトサンとラクトスクロース、肥満や脂肪肝の発生を防ぐ
キトサンとダイエット⑤
ラクトスクロースの腸管吸収阻害 / ラクトスクロースとキチン・キトサン、ほぼ同程度の抗肥満作用 / 女子大生を対象とした臨床実験 / キチン・キトサン+ラクトスクロースと水だけの比較実験 / まずバランスの取れた食事を / 糖質と油脂を減らす
キトサンとダイエット⑥
やせるとは脂肪細胞の脂肪の分解と筋肉における脂肪酸の分解 / 脂肪細胞における指肪の分解 / 科学的事実の必要性 / 運動の効用、脂肪酸を炭酸ガスと水に変えて体外に排出 / キチン・キトサンとラクトスクロースで部分やせが可能 / ノルアドレナリンの分泌で、脂肪分解が高まる可能性
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