キトサンとダイエット~キトサン学術報告
キトサンのダイエット作用について、「キチン・キトサン協会誌」から、
マウス及びヒト実験による、カニ殻由来のキチン・キトサンとラクトスクロース(乳果オリゴ糖)を用いた研究成果をご紹介いたします。
● キチン・キトサン学術報告
キトサンとダイエット①
やせる仕組み、ホルモン感性基質説 / キチン・キトサン+ラクトスクロース、肥満予防や治療の可能性 / キチン・キトサン、太る・痩せるの両面 / キチン・キトサン+ラクトクロースによる肥満予防実験 / ラクトスクロース単独でも著明なやせ
キトサンとダイエット②
脂肪はとても危険な物質 / 食事由来の脂肪が体内で溜まる仕組み / キチン・キトサンとラクトスクロースで脂肪肝が改善 / 脂肪を作る材料は、血糖とリポタンパク / よく噛んで食べると、満腹中枢が刺激され食べる量が減る
キトサンとダイエット③
キチン・キトサンとラクトスクロースの抗肥満作用 / キチン・キトサン、肥満予防の仕組み / キチン・キトサン、脂肪だけ腸管吸収を抑制 / キチン・キトサン、脂肪の分解を阻害
キトサンとダイエット④
生きた動物で起る現象を試験管の中で再現 / ラクトスクロースによるβ-モノグリセリドの腸管吸収阻害 / β -モノグリセリド、肥満との関係 / β -モノグリセリドの役割 / β-モノグリセリド、脂肪の再合成に重要な働き / キチン・キトサンとラクトスクロース、肥満や脂肪肝の発生を防ぐ
キトサンとダイエット⑤
ラクトスクロースの腸管吸収阻害 / ラクトスクロースとキチン・キトサン、ほぼ同程度の抗肥満作用 / 女子大生を対象とした臨床実験 / キチン・キトサン+ラクトスクロースと水だけの比較実験 / まずバランスの取れた食事を / 糖質と油脂を減らす
キトサンとダイエット⑥
やせるとは脂肪細胞の脂肪の分解と筋肉における脂肪酸の分解 / 脂肪細胞における指肪の分解 / 科学的事実の必要性 / 運動の効用、脂肪酸を炭酸ガスと水に変えて体外に排出 / キチン・キトサンとラクトスクロースで部分やせが可能 / ノルアドレナリンの分泌で、脂肪分解が高まる可能性
キトサンとダイエット①
やせる仕組み、ホルモン感性基質説 / キチン・キトサン+ラクトスクロース、肥満予防や治療の可能性 / キチン・キトサン、太る・痩せるの両面 / キチン・キトサン+ラクトクロースによる肥満予防実験 / ラクトスクロース単独でも著明なやせ
キトサンとダイエット②
脂肪はとても危険な物質 / 食事由来の脂肪が体内で溜まる仕組み / キチン・キトサンとラクトスクロースで脂肪肝が改善 / 脂肪を作る材料は、血糖とリポタンパク / よく噛んで食べると、満腹中枢が刺激され食べる量が減る
キトサンとダイエット③
キチン・キトサンとラクトスクロースの抗肥満作用 / キチン・キトサン、肥満予防の仕組み / キチン・キトサン、脂肪だけ腸管吸収を抑制 / キチン・キトサン、脂肪の分解を阻害
キトサンとダイエット④
生きた動物で起る現象を試験管の中で再現 / ラクトスクロースによるβ-モノグリセリドの腸管吸収阻害 / β -モノグリセリド、肥満との関係 / β -モノグリセリドの役割 / β-モノグリセリド、脂肪の再合成に重要な働き / キチン・キトサンとラクトスクロース、肥満や脂肪肝の発生を防ぐ
キトサンとダイエット⑤
ラクトスクロースの腸管吸収阻害 / ラクトスクロースとキチン・キトサン、ほぼ同程度の抗肥満作用 / 女子大生を対象とした臨床実験 / キチン・キトサン+ラクトスクロースと水だけの比較実験 / まずバランスの取れた食事を / 糖質と油脂を減らす
キトサンとダイエット⑥
やせるとは脂肪細胞の脂肪の分解と筋肉における脂肪酸の分解 / 脂肪細胞における指肪の分解 / 科学的事実の必要性 / 運動の効用、脂肪酸を炭酸ガスと水に変えて体外に排出 / キチン・キトサンとラクトスクロースで部分やせが可能 / ノルアドレナリンの分泌で、脂肪分解が高まる可能性
キトサンとダイエット④
【要点】キチン・キトサンとラクトスクロースは、高脂肪食によって誘導される肥満を予防する。キチン・キトサンは、膵臓リバーゼによる脂肪の分解を阻害することにより、ラクトスクロースは、脂肪の分解によって生じたβ-モノグリセリドの腸管吸収を抑制することにより、脂肪の吸収とそれに続くカイロミクロンの生成を低下させ、肥満や脂肪肝の発生を防いでいる。
【要点】キチン・キトサンとラクトスクロースは、高脂肪食によって誘導される肥満を予防する。キチン・キトサンは、膵臓リバーゼによる脂肪の分解を阻害することにより、ラクトスクロースは、脂肪の分解によって生じたβ-モノグリセリドの腸管吸収を抑制することにより、脂肪の吸収とそれに続くカイロミクロンの生成を低下させ、肥満や脂肪肝の発生を防いでいる。
愛媛大学医学部医化学第2教室 教授
医学博士 奥田 拓道 氏
医学博士 奥田 拓道 氏
生きた動物で起る現象を試験管の中で再現
すでに、キチン・キトサンとラクトスクロースは、高脂肪食によって誘導される肥満を予防するという成績を紹介しました。
キチン・キトサンは、膵臓リパーゼを阻害し、飼料中の脂肪の分解を抑え、その腸管吸収を阻害することを通じて、肥満を予防します。問題は、ラクトスクロースの作用です。以前述べたように、グルコースの腸管吸収をラクトスクロースは阻害すると考えていました。小腸の内面にある吸収上皮細胞をかき取り、すりつぶします。
これを庶糖密度勾配という方法を使って、細胞膜の部分だけを集めます。集まった細胞膜は、自然に袋状になっています。この袋を小腸刷子縁小胞と呼んでいます。
試験管の中に、この小胞を入れ、Na+の存在下で、放射能で標識した14C-グルコースの小胞への取り込みが、小腸へのグルコースの取り込みに相当するのです。生きた動物で起る現象を試験管の中で再現することができるのです。
かつて、私達は、この方法を使って、沖縄産の黒砂糖の黒色部分に、グルコースの腸管吸収を阻害する物質が存在することをつきとめ、その構造がフェニルグルコシドであることを明らかにしました。砂糖の分解によって生じたグルコースの吸収をフェニルグルコシドが阻害することによって、太るのを防ぐのです。
黒砂糖が白砂糖よりヘルシーである理由の1つです。同じ方法を使って、たこ、いか、ほやに含まれるベタイン系化合物(グリシンベタイン、ホマリン、トリゴネリン等)や鮭等水産物の軟骨に含まれるコンドロイチン硫酸も、グルコースの腸管吸収を阻害することを明らかにしました。
そこで肥満実験に用いた粗ラクトスクロース標品について、小腸刷子縁小胞への14C-グルコースの取り込みに対する作用を調べたところ、阻害作用を示したのです。
ラクトスクロースによるβ-モノグリセリドの腸管吸収阻害
ラクトスクロースは、ガラクトース、グルコース、フラクトースが連なったオリゴ糖ですが、この中に少しでもグルコースが含まれていると、14C-グルコースの放射能が希釈されて、見かけ上、阻害作用を示す危険があります。調べてみると粗ラクトスクロース標品の中にはl㎎中7μgのグルコースが混在していました。そこでグルコースを含まないラクトスクロースの純品を用いて、再検討したところ、グルコースの取り込みには全く影響はありませんでした。 つまり、ラクトスクロースは、グルコースの腸管吸収を阻害しないことが分ったのです。
ラクトスクロースが、グルコースの腸管吸収を阻害しないということになると、これ以外の肥満にかかわるものとしては、脂肪の吸収しかありません。脂肪が小腸から吸収されるためには、まず膵臓リパーゼによって脂肪酸と、β-モノグリセリドに分解される必要があります。
キチン・キトサンは、この分解の過程を阻害したのですが、ラクトスクロースは、全く阻害作用を示さないことが分りました。残る可能性は、脂肪の分解によって生じた脂肪酸とかモノグリセリドの腸管吸収です。
しかし、これまで小腸刷子縁小胞を用いて、脂肪酸やβ-モノグリセリドの取り込みについて調べた報告はありません。
そこで、種々の検討の結果、小腸刷子縁小胞に10mM HEPES -Tris緩衝液(pH7.5) に100mMマニトールを加えた系で、脂肪酸やβ-モノグリセリドの取り込みを測定するシステムを確立しました。
この測定系を用いて、放射性脂肪酸(パルミチン酸やオレイン酸)の取り込みについて検討しましたが、ラクトスクロースは全く阻害作用を示しませんでした。
β-モノグリセリド、肥満との関係
次に、最後に残ったβ-モノグリセリドの小腸刷子縁小胞への取り込みについて調べてみました。まず問題になったのは、β-モノグリセリドは、市販されていないので、自分で作らなければならなかったことです。グリセロールに3つの放射性オレイン酸の結合したトリオレインに膵臓リパーゼを作用させた後、薄層クロマトグラフィーという方法で分解産物を分離し、β-モノグリセリド(この場合は、β-モノオレイン)を取り出します。
この放射性β-モノグリセリドの小胞への取り込み(図1)ラット小腸刷子縁小胞へのβ-モノグリセリドの取り込みに対するラクトスクロースの阻害作用を調べたところ、図1に示すようにラクトスクロースは、見事に阻害作用を示したのです。
これは、ラクトスクロースがβ-モノグリセリドの腸管吸収を阻害する可能性を示す成績です。いったいβ-モノグリセリドは、肥満にとって、どのような意味を持っているのでしょうか。
小腸の中で分解された脂肪は、脂肪酸やβ-モノグリセリドとして上皮細胞に吸収されると再び脂肪に合成されます。なぜ一見無駄とも思えることをするのでしょうか。再び合成するのならば、分解することなく脂肪のまま吸収すれば良さそうなものです。
これには、理由があるのです。脂肪酸は炭素(C) と水素(H) の結合したもので最後にカルボキシ基(COOH) を持つ物質(CH3-CH2-CH2- …… CH2COOH ) です。炭素の数で脂肪酸は3つに分類されます。炭素数2~6の短鎖脂肪酸、8~12の中鎖脂肪酸、14~22の長鎖脂肪酸です。
β-モノグリセリドの役割
私達が食べる食品の中には、短鎖、中鎖、長鎖の脂肪酸が含まれています。酢の中の酢酸(CH3COOH、炭素数2)、チョコレートに含まれるラウリン酸(炭素数12) 、牛肉に含まれるパルミチン酸(炭素数16) などです。不思議なことに、体の中の脂肪酸には、短鎖、中鎖はなく、長鎖脂肪酸だけなのです。どこかで選り分けられているはずです。それが吸収上皮細胞の中なのです。 この細胞の中で、長鎖脂肪酸のみが、β-モノグリセリドと結合し、脂肪になりますが、結合できなかった短鎖、中鎖の脂肪酸は、門脈を経て肝臓へ行き、炭酸ガスと水に分解されてしまうのです。
では、どんな仕組みで、長鎖脂肪酸のみがβ-モノグリセリドと結合するのでしょうか。長鎖脂肪酸のみを選り分ける仕組みは2つあります。1つは、脂肪酸にコエンザイムA (CoA) を結合して活性化するアシルCoA合成酵素です。
この酵素は、長鎖脂肪酸のみにCoAを結合し、短鎖、中鎖の脂肪酸には結合しません。
CoAの結合した長鎖脂肪酸(これをアシルCoA と呼んでいます)がβ-モノグリセリドと縮合し、ジグリセリドに、さらにもう1つアシルCoAが結合して、トリグリセリド(脂肪)になるのです。もう1つの選り分けは、リバーゼによって行われます。
この上皮細胞の中にあるリパーゼは膵臓リパーゼと同じ酵素です。しかし、膵臓でつくられたリパーゼが上皮細胞に取り込まれたわけではなく、この細胞自身で膵臓と同じリパーゼをつくっているのです。
上皮細胞中のリパーゼは、長鎖脂肪酸だけを選んでβ-モノグリセリドに結合し、ジグリセリドをつくります。ジグリセリドからトリグリセリドへの転換は、アシルCoAが結合することで行われます。
リバーゼによって、ジグリセリドができる時には、長鎖脂肪酸にCoAがくっつく必要はありません。脂肪酸のままβ-モノグリセリドに結合するのです。
β-モノグリセリド、脂肪の再合成に重要な働き
ここで不思議に思われる方が、いらっしゃることと思います。というのは、リパーゼは、脂肪を分解する酵素であるはずです。それが細胞の中でモノグリセリドからジグリセリド(グリセロールに2つ脂肪酸が結合したもの)へ合成するのですから不思議です。
実は、脂肪の分解は、リパーゼの持っている能力の一部に過ぎないのです。リパーゼは、本来、長鎖脂肪酸を水酸基(OH-) に渡す働きをしています。 小腸の管腔のように水の多い所では、水の水酸基に脂肪酸が渡って分解反応が起ります。しかし、水の少ない細胞の中では、β-モノグリセリドの水酸基に脂肪酸が渡るのです。
脂肪の合成、分解という立場でみると、リバーゼは全く逆の反応に関わっているようにみえますが、リパーゼとしては、単に水酸基に脂肪酸を渡しているだけあって、それが分解になるか合成になるかは、水の量が決めているのです。
少し難しくなりましたが、β-モノグリセリドは、吸収上皮細胞内での脂肪の再合成に重要な働きをしているのです。これがなければ、脂肪の再合成はできません。 再合成された脂肪は、コレステロール、リン脂質、アポタンパク(アポA、アポB) と一緒になり、カイロミクロンと呼ばれるリポタンパクになって、リンパ管を経て、血液に流れ込みます。
ラクトスクロースが、β-モノグリセリドの腸管吸収を阻害すると、吸収上皮細胞内での脂肪の再合成ができず、(図2)ラクトスクロースによるコーンオイル経口投与後の高脂血症改善作用イロミクロンもつくれなくなります。
図2は、コーンオイルを胃チューブで投与したラットの血液中性脂肪(カイロミクロンに由来する)の変化をみた成績です。コーンオイルと共に、ラクトスクロースを投与すると、血液中性脂肪は有意に低下します。これは、ラクトスクロースによって、血液カイロミクロンが減少することを示す成績です。
キチン・キトサンとラクトスクロース、肥満や脂肪肝の発生を防ぐ
高脂肪食によって誘導されるマウスの肥満と脂肪肝をキチン・キトサンとラクトスクロースが予防しますが、その仕組みは、以下のように考えることができます。
高脂肪食に含まれる牛脂は、肥満や脂肪肝の原因となる物質ですが、この牛脂は、小腸内で膵臓リパーゼによって分解され、脂肪酸とかβ-モノグリセリドという形で吸収されます。その後、両者は、再合成され、カイロミクロン中の脂肪となり、肥満や脂肪肝発生の原因になります。 キチン・キトサンは、牛脂の小腸内での分解を抑えることによって、ラクトスクロースは牛脂の分解によって生じたかβ-モノグリセリドの腸管吸収を阻害することによって、共にカイロミクロンの生成を低下させ、肥満や脂肪肝の発生を防いでいると考えられます。