キトサンと血圧②~キチン・キトサン学術報告
カニ殻・キトサンの作用について、「キチン・キトサン協会誌」よりご紹介いたします。健康維持や栄養補給で、キトサン製品を飲用する際、その有用性については個人差があります。 また重篤な疾患のある方がキトサン製品を補助的に飲用する場合は、医師や医療機関と相談の上、ご使用ください。
● キトサンと血圧②
血圧調節の仕組みに、レニン・アジオテンシン系 / キチン・キトサン、塩素の上昇を阻止 / キチン・キトサン、食塩中の塩素を糞中に排泄
【 要点 】高塩食摂取の影響をヒト試験で行ったところ、高塩食摂取後に収縮期血圧が1時間後に上昇し、3時間後には元の値になったが、キチン・キトサンを食事直後に食べた場合は、そうした血圧の上昇は認められなかった。キチン・キトサンは食塩中の塩素を糞中に排泄し、体内にとり込まない。結果、血圧の上昇を防ぐ。
血圧調節の仕組みに、レニン・アジオテンシン系 / キチン・キトサン、塩素の上昇を阻止 / キチン・キトサン、食塩中の塩素を糞中に排泄
【 要点 】高塩食摂取の影響をヒト試験で行ったところ、高塩食摂取後に収縮期血圧が1時間後に上昇し、3時間後には元の値になったが、キチン・キトサンを食事直後に食べた場合は、そうした血圧の上昇は認められなかった。キチン・キトサンは食塩中の塩素を糞中に排泄し、体内にとり込まない。結果、血圧の上昇を防ぐ。
愛媛大学医学部医化学第2教室 教授
医学博士 奥田 拓道 氏
医学博士 奥田 拓道 氏
血圧調節の仕組みに、レニン・アジオテンシン系
体の中で血圧を調節する仕組みは色々ありますが、その中の1つがレニン・アジオテンシン系です。肝臓でつくられたアンジオテンシンノーゲンというタンパク質が血液に分泌されると、腎臓から分泌されたレニンによって分解され、アンジオテンシンI という物質が切り出されます。
このアンジオテンシンI にアンジオテンシン転換酵素(A C E) が働いてアンジオテンシンⅡにします。これが血管を収縮して血圧を上げるのです。ACEは、また血管を拡張し、血圧を下げる働きをするキニンを分解します。( 図1 )
血圧を上げる物質をつくり、血圧を下げる物質を分解するのですからACEは血圧を上げるのに深く関与した酵素といえます。現在、ACEを阻害するカプトプリルという薬が降圧剤として広く用いられています。
ところで、食塩中の塩素は逆にこのACEの働きを強めるのです。実は、塩素がACEの働きを強めるということは周知の事実でした。そこで血液のACEを測定する際に、食塩を加えた状態で測るのが慣例になっていました。
血液から血清を分離し、それを試験管に入れ、ピプリルーグリシル・グリシンから遊離するグリシル・グリシンを測定することでACEの働きをみるのですが、この時試験管の中に食塩を加えるのです。
食塩を加えることで、例え血液の中では塩素濃度の違いによるACEの働きの差があったとしても、試験管の中では打ち消されてしまいます。
キチン・キトサン、塩素の上昇を阻止
そこで、血液の塩素濃度の差によって生じるACEの働きの差を忠実に測定するには、試験管の中に食塩を加えてはならないことになります。食塩を経口摂取した後に塩素が血液中に上昇するのは、1時間前後であり、3時間後には元の値にまで下がっています。ネズミでは、食餌の時間を厳密に一定にすることはむずかしいので、どうしてもヒ卜を対象にした臨床実験が必要になります。そこで私自身が実験に参加することにし、他に共同研究者の加藤秀夫博士(広島女子大教授) 、愛媛大学医学部学生有志5名が、ある日曜日の朝8時、松山西病院に集まりました。
西病院の院長多嘉良博士は、山口大学泌尿器科助教授をつとめられた方で、私達の実験に心よく協力してくださいました。8時半に13.2gの食塩を含む塩辛い朝食をたべます。塩辛いみそ汁、煮物、魚の干物などです。
食前、食後1時間、3時間後に血圧を測り動脈血を上腕動脈から採取します。1週間後の日曜日の朝8時、同じメンバーが西病院に集合し、同じ塩辛い朝食を食べ、同じように血圧を測り、動脈血を採取します。但し、朝食後、キチン・キトサン5gを食べる点が異なっています。結果は予想通りでした。図2をみてください。
高塩食摂取後に収縮期血圧が1時間後に上昇し、3時間後には元の値になりますが、キチン・キトサンを食事直後に食べた場合には、そのような血圧の上昇は認められません。また血圧の上昇に一致して、血清境素濃度が上昇します。キチン・キトサンは塩素の上昇を阻止しています。
キチン・キトサン、食塩中の塩素を糞中に排泄
血液中の陰イオンの濃度は常に一定ですが、陰イオンである塩素の上昇に対応して、同じく陰イオンである重炭酸イオンが減少していることがわかりました。血清塩素の上昇と共に、血清ACE活性も増加します。このACEは、試験管に食塩を加えない状態で測定したものです。キチン・キトサンを食べた場合には、ACEの上昇はみられません。又血清ナトリウムは食前・食後1 時間、3時間で全く変動せず、常に140mM前後でした。このような成績から、高塩食による血圧上昇しくみとキチン・キトサンの予防効果に関し、図3に示すような推測が可能です。
高食塩を摂取することによって、血清塩素が上昇し、これがACE の働きを強め、その結果、アンジオテンシンⅡの上昇、キニンの低下をきたして血圧が上昇するがキチン・キトサンを食べると食塩中の塩素が糞中に排泄され、体内にはとり込まれないので血圧の上昇を防ぐことができるというものです。
もちろん、ナトリウムが血圧とは無関係というわけではありません。腎機能が傷害された場合などは、ナトリウムも血圧上昇に関与しますが、少くとも血圧だけが高く、他は正常である本能性高血圧症の場合には、ナトリウムより、塩素が重要であると言えるのではないでしょうか。