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キトサンと体質~キチン・キトサン学術報告

キトサンの作用について、「キチン・キトサン協会誌」よりご紹介いたします。健康維持や栄養補給で、キトサン製品を飲用する際、その有用性については個人差があります。 また重篤な疾患のある方がキトサン製品を補助的に飲用する場合は、医師や医療機関と相談の上、ご使用ください。

キトサンと体質
細胞の中のpHは場所によって様々 / キトサンからグルコサミン、細胞間質液pHの低下を防ぐ可能性
【 要点 】私達の体の中には、様々なpHがある。細胞を取り巻いている細胞間質液は血管(毛細血管)からしみ出た溶液で、pH7.4から6.8の間を変動している。細胞間質液のpHの低下を防ぐことは、糖尿病の改善につながる。キチン・キトサンの一部が腸で分解され、生じたグルコサミンは細胞間質液pHの低下を防ぐ可能性がある。


愛媛大学医学部医化学第2教室 教授
医学博士 奥田 拓道 氏
細胞の中のpHは場所によって様々

酸性体質という言葉があります。体が酸性になると、でき物ができたり、糖尿病になったりで、体力が低下するということです。しかし、専門家は、酸性体質などは迷信であり、そんなものはあり得ないと主張しています。

理由は、血液のpH (ピーエッチ、酸性、アルカリの指標、7が中性、7以下が酸性、7以上がアルカリ)は、常に7.4であり、7以下に下がることはあり得ないからというのです。血液のpHについては、その通りですが、体の中のpHを血液だけが代表しているのでしょうか。

寄妙な話なのですが、酸性体質を否定しているにもかかわらず、医師は、尿のpHを測定しているのです。扁桃腺がはれて、高熱が続いた子供の尿のpHが5以下に下がると、酸性体質(アシドーシス)になったと診断し、輸液を行います。

そうすると不思議なことに、輸液が終らないうちに、子供はみるみる元気になってきます。いったい尿のpHは、からだの中のどこのpHを反映しているのでしょうか。

私達の体は、60兆個の細胞から作られているといわれています。細胞の中のpHは場所によって様々です。細胞質のpHは6.8、ミトコンドリアは8.0、リソゾームは5.0などです(図1 )。


pHを決めているのは水素イオン(H+)です。ミトコンドリアからは絶えずH+が細胞質へ汲みだされています。汲み出す力は、でんぷんなどに含まれている太陽エネルギーです。汲み出されたH+が再びミトコンドリアに流入する時にATPがつくられます。

このATPは私達が活動する時のエネルギーのもとになる物質です。つまり、ミトコンドリアと細胞質の間にpHの差(8.0と6.8) があることで私達は生きてゆけるのです。

リソゾームは、清掃工場です。細胞の中へ取り込まれた大きな物質や細胞自身がつくった老廃物を処理する所です。pH5.0付近で働く多くの消化酵素が存在しています。

忘れてならないのは、細胞を取り巻いている細胞間質液です。これは血管(毛細血管)からしみ出た溶液で、pH7.4から6.8の間を変動しています。つまり、血液と細胞質のpHの間を行き来しているのです。(図1参照) 。

このように、私達の体の中には、様々なpHがあるのです。血液のpHは、7.4であるから酸性体質などはあり得ないなどという幼稚とも無邪気ともいえる結論をくだす前に、からだの中のpHの生理的意義を調べてみようとする科学的態度が必要なのではないでしょうか。

キトサンからグルコサミン、細胞間質液pHの低下を防ぐ可能性

では、尿のpHは、体の中のどのpHを反映しているのでしょうか。尿のpHは、糖尿病の時に低下することは良く知られています。体の中のpHで、糖尿病時に明らかに低下するのは、細胞間質液のpHでした。血糖値が360mg/dLの糖尿病ラットでは、細胞間質液pH7.4から7.17へ低下していました。

血液や細胞内のpHは変化していません。尿のpHは下がるといっても5前後ですので、絶対値はずいぶん違っていますが、pHの低下では尿と細胞間質液は共通しているのです。いったいpHの低下はどんな仕組みで起るのでしょうか。

まずH+を増加させる物質の蓄積です。糖尿病時のケトン体、運動時の乳酸、肥満の時に増える遊離脂肪酸、血液の流れが悪くなった時に蓄積する炭酸ガスなどがそれです。

もう1つは、H+を増加させる物質が増えてもpHを一定に保とうとする力(これを緩衝作用と言います)です。血液の中には、赤血球にあるヘモグロビン、タンパク質、重炭酸塩などがあり、これらが緩衝作用をもっています。

肺で酸素と結合したヘモグロビンは、末梢に来ると酸素を放出し、代りにH+と結合するのです。血液の緩衝作刷の8割は、ヘモグロビンに由来するといわれています。

細胞の外と中でH+は、自由に出入りできない仕組みがあるので、その仕組みが変化しない限り、pHは一定です。細胞間質液には、タンパクや重炭酸塩はありますが、ヘモグロビンや細胞のようにH+の出入りをコントロールする仕組みはありません。

そこで、ケトン体や炭酸ガスなど、H+を増加させる物質が蓄積すると、血液や細胞よりもはるかに容易にpHが低下するというわけです。細胞間質液のpH が低下すると、インスリンによる細胞へのブドウ糖の取り込みが阻害されます。

つまり、インスリンがあってもその作用が阻害されるという成人糖尿病の状態になるのです。
細胞間質液のpHの低下を防ぐことは、糖尿病の改善につながるわけです。キチン・キトサンの一部が腸で分解され、生じたグルコサミンには、(図2)で示すように、H+を取り細胞間質液pHの低下を防ぐ可能性があるのです。



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