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キトサンと食塩~キチン・キトサン学術報告

キトサンの作用について、「キチン・キトサン協会誌」よりご紹介いたします。健康維持や栄養補給で、キトサン製品を飲用する際、その有用性については個人差があります。 また重篤な疾患のある方がキトサン製品を補助的に飲用する場合は、医師や医療機関と相談の上、ご使用ください。

キトサンと食塩
血圧上昇、塩素が鍵というのがこれまでの主流 / 血圧上昇、ナトリウムか塩素のどちらか / キトサン、血中の塩素が低下し血圧が下がる / 塩素が血圧上昇につながっている  
【 要点 】ヒトでもラットでも塩素によって血圧が上がる。これはアンジオテンシンI転換酵素を介した上り方で、消化管でこれを取り除くには食物繊維が大切になる。ヒトの実験でキトサンで血圧の降圧効果があることがわかった。


広島女子大学家政学部食物栄養学科教授
医学博士 加藤 秀夫 氏
血圧上昇、塩素が鍵というのがこれまでの主流

現在、低血圧、高血圧を正常な血圧に戻す治療では、色々な薬剤が使われていますが、食品、食材を使う治療法も研究されています。体の血圧調節には低い時に血圧を上げる昇圧系と、高い時に下げる降圧系があり、昇圧系ではレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系が大きな役割を果たしています。

アンジオテンシンはⅠ、Ⅱがあり、Iは10個のアミノ酸から成るペプチドでアンジオテンシンIは血圧の上げ下げはしませんが、アンジオテンシンI転換酵素(ACE)という酵素が加わるとアミノ酸8個のアンジオテンシンⅡに変化して、血管を収縮させて強力な血圧上昇を起こします。

また他の働きとして、ナトリウムを調節するアルドステロンの合成分泌を高めて、ナトリウムの再分泌を行い血圧を上げると言われています。

血圧を下げる機能として、カリクレイン、キニン系が働き、カリクレイン酵素がキニノーゲンをキニンに変えて、キニンは血管を拡張させたり食塩の尿中への排出を促進させ血圧を下げます。

キニンを分解するキニナーゼⅡが良く働くと、血圧を下げる物質キニンが減って血圧は上がります。キニナーゼⅡがアンジオテンシンI 転換酵素と同じ訳ですからこの酵素は昇圧系と降圧系の両方で血圧を上げる働きをしている事がわかります。

アンジオテンシンI転換酵素を阻害すれば血圧上昇を抑える事が出来るのです。この事を考えてアンジオテンシンI転換酵素の阻害物質を薬にしたカプトプリルは降圧剤の特効薬になっています。

次にこの酵素と食塩との関係について、試験管で調べた結果を話します。

血液のサンプルは広島女子大の学生と私のものを使い、アンジオテンシンI 転換酵素の何も加えられていない状態を100とした場合を基準に塩を加えていき、血圧が上る様子を調べた所、アンジオテンシンI 転換酵素の活性度は100から200前後に上がる事がわかりました。

食塩の中のナトリウムと塩素のどちらが作用しているのか実験をしてみると、ナトリウムは従来、血圧の上昇に深く関係があると考えられていましたが、アンジオテンシンI転換酵素の活性度つまり血圧の上昇には塩素が試験管内では関係している事がこの実験でわかったので、更に塩素に注目した実験を重ねてみました。

動物に、塩分濃度ゼロ(塩分ゼロ)・低塩(2000Kca 1/4 .7g) ・中塩(大体人間が摂る適量)・高塩(適塩より少し多め)としたえさを与え、アンジオテンシンI 転換酵素の上り具合を見てみると、塩分が多くなる程ACEの酵素活性度が上がりました。先程の実験結果と合わせても、塩素が関係している事がわかってきました。

20世紀初頭では塩素が血圧上昇の鍵だというのが主流でした。現在は新説や今までの実験の落し穴などもわかりどちらかという事は、はっきりしていません。

血圧上昇、ナトリウムか塩素のどちらか

そこではっきりさせるために1つは正常ラット、2つめは食塩を多く摂ると高血圧になるラットの2種類で実験を行いました。ナトリウム食はナトリウム塩で塩素の陽イオンが付いたものを入れ、塩素食は塩化物とナトリウムの付いていない有機酸。塩化ナトリウム食は塩素とナトリウムの一部を合わせたものを使いました。

これをラットに6週間与え続けると、ナトリウムに関しては、正常なラットも高血圧になりやすいラットも血中では一定に保たれました。塩素食を与えた場合ナトリウムが入っていないので血中のアルドステロンが非常に高く、尿中へのナトリウム排泄を極力抑え、ナトリウムの再吸収を促進する動きが見られます。

このナトリウムバランスが崩れるとラットは死んでしまいます。しかし6週間ではまだ一定に保っていました。塩素の場合は体内ではほとんど一定に保たれることがなく塩素の入っていないナトリウム食を食べているラットの血中には塩素は低い濃度になっています。

塩素を調節するホルモンが体内にあるかどうかまだわかっていません。これも将来は興味ある研究になるでしょう。血圧のデータは、これは最高血圧だけを見たものです。

高血圧ラットは食塩を与えるとだいたい220位に血圧が上がります。正常ラットも血圧が少し上がっています。ところがナトリウムだけとか塩素だけとかの場合はあまり血圧に変化は見られません。

先程のアンジオテンシンI転換酵素を使って試験管内で実験した時は塩素が増えると血圧も上がったのですが、またここで問題点が出てきました。食塩だけを与えて育てたラットは成長ホルモンが刺激されて通常ラットよりも体重が増えます。

ナトリウムだけとか塩素だけのラットは衰弱してしまいます。衰弱するということはある意味で低血圧を起こします。よってこの実験ではナトリウムと塩素のどちらかが血圧を上げるかを確かめることはできなかったのです。

そこで次の実験では食物繊維を使ってみました。なぜなら食物繊維は吸収されずに陰イオン・陽イオンをくっつけて消化管を通って排池されます。アルギン酸(海藻にも含まれる)はナトリウムをくっつけて糞中に排池します。だから海藻を良く食べると血圧が下がるというのはナトリウム説からの言い分ですね。

こうするとどちらかを排出してしまうことでナトリウムか塩素のどちらかが血圧を上げているか、わかるという計算です。

キトサン、血中の塩素が低下し血圧が下がる

ここでたまたまキトサンを見つけまして、塩素を取り除く繊維としてキトサンを使ってみました。キトサンは陰イオンと吸着しやすく、アルギン酸は陽イオンと吸着しやすいのです。高塩食にキトサンを与えた場合は塩素を糞中に排泄し、アルギン酸を与えるとナトリウムを排泄するのです。

この実験の結果ですが、正常なラットと高血圧ラット共に通常に成長しました。ですからアルギン酸とキトサンは成長を妨げません。アルギン酸、キトサン共に血中のナトリウム量は変わりませんでした。

血中の塩素はどちらのラットもキトサンを与えますと下がります。塩素濃度によって活性化し血圧を上げるアンジオテンシンI 転換酵素を見ます。この場合もキトサンによって酵素が下がっています。血圧はどうでしょうか。

高血圧ラットにアルギン酸と高塩食を与えると血圧は直線的に上がります。キトサンは高くてしかたなかったのでケチって使いました。キトサンを入れた場合は血圧の上昇を抑制しました。

この場合ナトリウムの排泄を促進して血圧の上昇を抑制したといよりは、塩素の排泄を促進して上昇を抑えたといえます。正常ラットの場合でも血圧が140くらいまで上がりまして、キトサンを与えますと110位まで抑えられました。

ということで高血圧ラットも正常ラットもキトサンの添加によって血圧上昇が抑制されたというのが結果です。まとめますと食塩を多く摂ると血圧が上がるのですが、キトサンを摂りますと塩素の糞排泄を促進し、血中の塩素が低下します。

塩素が低下するとアンジオテンシンⅠ転換酵素の活性化も低下します。これによって血管を拡張するキニンを分解しないままにしておけるわけです。またアンジオテンシンⅡも作らないで済むので結果的に血圧を下げる、または上げないでおくことができるのです。

今までがラットの実験だったのですが、今度は奥田先生にも協力して頂いて、学生さんと、我々自身が被験者になった実験です。血圧は皆さんもご存知のように朝から上がります。夜は下がりますから降圧剤は夜はあまり効きません。

人間が活動するために朝から血圧が上がって良いのですが、高血圧の人はどっと上がると困ります。ですからキトサンは朝と昼によく食べると良いのではないかと思います。

塩素が血圧上昇につながっている

また最近では食塩を多く摂りますと尿中にカルシウムが多く排泄されることもわかってきました。カルシウムとナトリウムは一緒に排泄されます。これはまだはっきりしていませんが、食塩を多く摂るとインシュリンも分泌が高まるとも言われています。

インシュリンが血圧を上げるという説も出ています。肥満の人が高血圧になるというのはインシュリン説と言われています。関係としてインシュリンの分泌とナトリウムや塩素の関係も調べられていますが、塩素の方が有力ということです。

これは、塩素はアンジオテンシンI 転換酵素を介して血圧が上がりまして、もう一つは塩素がインシュリンを分泌して脂肪蓄積を促進して肥満になり、肥満が高血圧の原因になるわけです。はっきりしていませんがインシュリンが血圧調節にも関係しているのではないかと思います。

次の実験として、やはり食事だけで健康を考えるのは難しいということで、運動とかリズムまた食べ物も調べないと、食品中にビタミンが多いから体に良いなんでいうことは、わからないと思います。

こうした考えから出てきた実験です。我々が被験者になり、朝食を表にあるようなメニューで1100カロリー摂ります。次の表は食べてからの時間と血中のナトリウムの平均値です。

二つある中でこちらはただの辛い高塩食、こちらは高塩食にキトサンを混ぜたものです。個人差も有りましたが、血中のナトリウム量はほとんど変わりませんでした。カリウムについてもほとんど変化がなかったのです。食塩をたくさん摂ったからと言って増えるようなことはないです。

陽イオンはナトリウム、カリウムとの関係が注目されていますが、食塩を摂ってもあまり変わりませんでした。塩素が上がればどうも血圧も上がるということを考えておりまして、ここでは塩素以外の陽イオンも変化するはずです。

その代表的なものが重炭酸イオンであります。重炭酸ナトリウムは動脈血から採ります。この血液の中では食塩をたくさん摂った場合は重炭酸ナトリウムは減りました。塩素は増加していました。トータルで陰イオンは変わりませんでした。

ですからまず食塩を摂ると重炭酸イオンは低下します。(正常値は24位です。)ですがキトサンを入れるとほとんど変わりません。代わりに食塩を多く摂ると塩素が増加します。これもキトサンを入れると変わりません。

アンジオテンシンI転換酵素も食塩摂取で増えますが、キトサンを入れると変化がありません。アンジオテンシンⅡもキトサンを入れた場合には増えません。血圧も食べた直後の1 時間では上がりますが、3時間ではもとに戻ります。

健康な人は血圧がもとに戻るのも早いです。ここでもキトサンを入れると上昇は見られません。ですからヒトでもラットでも塩素によって血圧が上がり、これはアンジオテンシンI転換酵素を介した上り方ですが、消化管でこれを取り除くにはやはり食物繊維が大切になってきます。

まとめとしてヒトの実験ではキトサンで血圧の降圧効果があるのがわかります。また我々の始めからの目的だった塩素が血圧上昇につながっているという結果になりました。


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