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キトサンと血糖~キチン・キトサン学術報告

キトサンの作用について、「キチン・キトサン協会誌」よりご紹介いたします。健康維持や栄養補給で、キトサン製品を飲用する際、その有用性については個人差があります。 また重篤な疾患のある方がキトサン製品を補助的に飲用する場合は、医師や医療機関と相談の上、ご使用ください。

キトサンと血糖
Ⅱ型糖尿病の特効薬の出現を阻んでいるもの / インスリン、血糖を筋肉や脂肪細胞に取り込ませる働き / 細胞間質液pH7.4以下だと、インスリンの血糖取り込み作用が阻害 / 細胞間質液pH の低下によって、成人糖尿病が発生
【 要点 】 細胞間質液pH の低下によって、成人糖尿病が発生する。運動不足も激しい運動も、細胞間質液pH が低下するため、成人糖尿病になる危険にさらされる。キチン・キトサンの分解物であるグルコサミンは細胞間質液pH の低下を防ぐため、成人糖尿病の予防が期待される。


愛媛大学医学部医化学第2教室 教授
医学博士 奥田 拓道 氏
Ⅱ型糖尿病の特効薬の出現を阻んでいるもの

糖尿病は筋肉や脂肪細胞への血糖の取り込みを促すインスリンというホルモンの作用が低下することで起こる病気です。血糖が取り込まれないので、血液や尿に糖があふれます。

インスリンが低下する仕組みは2通りあります。1 つは、インスリンを生産し、分泌する膵臓のベーター細胞が破壊されているため、インスリンが出来なくなり、その量が低下して起こる糖尿病です。

これをⅠ型糖尿病と呼んでいます。インスリンの量が少なくなるのですから、インスリンを注射で補ってやれば良い訳です。

Ⅰ型糖尿病の特効薬はインスリンです。しかし、糖尿病の大部分を占めるのはⅠ型ではなくⅡ型糖尿病と呼ばれるものです。

Ⅱ型糖尿病とは、インスリンはあるのに筋肉や脂肪細胞がこのホルモンに反応しないため、血糖が取り込まれない病気です。インスリンの量ではなく、その作用が低下した状態です。

そこで、Ⅱ型糖尿病の特効薬が出現するとすれば、インスリンはどんな仕組みで血糖の取り込みを促すかが明らかにされていなければなりません。インスリンが細胞に働くと、血糖の取り込み以外にも、様々な現象が起こります。

タンパク質に燐酸が結合するというのもその1つです。私達はこのタンパク質の燐酸化は血糖の取り込みとは何の関係もないことを証明した論文を出しています。

1950年代にタンパク質の燐酸化がインスリンをはじめ多くのホルモンの作用に関わっているという仮説がノーベル賞を受賞した研究者から提唱され、欧米の研究者からこれが支持されました。

もちろん、欧米を師と仰ぐ日本の研究者もこれに同調しました。血糖の取り込みという生理作用よりもこうした仮説を大事にしたのです。

Ⅱ型糖尿病の特効薬の出現を阻んでいるのは、この血糖の取り込みという生理作用よりもタンパク質の燐酸化という仮説を大事にする研究姿勢にあるといえます。

インスリン、血糖を筋肉や脂肪細胞に取り込ませる働き

糖尿病には、小児糖尿病と成人糖尿病とがあります。小児糖尿病とは、何らかの理由で膵臓のベーター細胞からのインスリンの分泌が阻害され、インスリン不足によって引き起こされた糖尿病です。

この場合は、遺伝子工学の手法で作られたヒトインスリンを注射することで病態が改善します。一方、成人糖尿病は、インスリンが不足しているだけではなく、その作用が阻害されています。

インスリンの作用とは、血糖を筋肉や脂肪細胞に取り込ませる働きです。インスリンが不足したり、インスリンがあっても、その作用が阻害されると、血管外の細胞に血糖が取り込まれず、血液や尿に糖がたまり、糖尿病になります。

小児糖尿病の特効薬はインスリンですが、成人糖尿病の治療は、どうしたらよいのでしょうか。

実は、成人糖尿病の特効薬はないのです。インスリンの作用が阻害されて成人糖尿病になるのですから、その特効薬を作るには、インスリンの作用する仕組みが明らかにされていなければなりません。

インスリンによって血糖(グルコース)が細胞内に取り込まれる時には、細胞膜のグルコース運搬体の数が増えます。

細胞内の小胞体と呼ばれる膜にあったグルコース運搬体が細胞膜に移動することによって数が増加します。(図を参照)


細胞間質液pH7.4以下だと、インスリンの血糖取り込み作用が阻害

問題はインスリンがどのような仕組みで運搬体の移動を促しているかです。ここの所が判っていないのです。

現在2つの説があります。インスリン受容体説とナトリウムープロトン(Na+/H+) チャネル説です。後者は私が主張している説です。

多くの実験事実から、インスリン受容体説は、インスリンの血糖取り込み促進を説明するものではないと考えていますが、余りにも専門的になり過ぎるので詳細は省略します。

私がNa+/ H+チャネル説を主張するきっかけになったのは、酸性体質との関連です。

細胞間質液pHが7.4以下に下がるのが酸性体質です。細胞間質液とは、筋肉や脂肪細胞など血管外の細胞の周りをつつんでいる溶液です。

この細胞間質液pH が7.4以下に低下するとインスリンの血糖取り込み作用が阻害されるのです。インスリン受容体説では、この現象は説明できません。

この説の受容体とインスリンとの結合は、細胞間質液pH の低下で阻害されないからです。一方、Na+/H+チャネル説では見事に説明できます。

Na+/H+チャネル説とは、インスリンが細胞膜にあるNa+/H+チャネルの働きを強めると、グルコース運搬体の小胞膜から細胞膜への移動が起り、血糖の取り込みが進むという説です。(図参照)

Na+/H+チャネルとは、細胞外のナトリウム(Na+) を細胞内へ、細胞内の水素イオン(H+ ) を細胞外へ移動させるチャネルです。インスリンがこのチャネルを動かすと、Na +が細胞内に取り込まれ、H+が細胞外へ出て行くのです。

しかしインスリンがこのように働くのには、前提条件があります。それは、細胞内外のNa+ とH+の濃度差があることです。正常な状態では、細胞外(細胞間質液)のNa + は140mM ,H+の濃度を示すpH は7.4 です。

細胞内(細胞質)のNa+ は20mM, pH は6.8 です。pHが低いほどH+の濃度は高いのです。つまり細胞外はNa+が高く細胞内はH+が高い状態です。

細胞間質液のpHが7.4から7.2、6.8 と下がると細胞内外のH+の濃度差が少なくなってきます。濃度差が少なくなると、インスリンがあってもNa+/H+チャネルは動かず、グルコース運搬体の移動も起らず、従って、血糖の細胞内への取り込みも行われず成人糖尿病になるというわけです。

細胞間質液pH の低下によって、成人糖尿病が発生

インスリンによって、細胞質のH+が外に出ると細胞内のpH が上昇します。このpH の上昇が引き金になってグルコース運搬体の移動を起すものと思われます。恐らくカルシウムが何らかの役割を演じているはずです。

細かい点では、なお不明な点がありますが、細胞間質液pH の低下によって、成人糖尿病が発生するのは、まぎれもない事実です。

長時間椅子に腰かけているとお尻の圧迫によって下肢への血流が遮断され、下肢の筋肉周辺の細胞間質液に炭酸ガスがたまり、pH が低下し、局所的な成人糖尿病になります。時々立ち上がって運動する必要があります。

肥満すると脂肪細胞にたまっている油滴が大きくなります。油滴が大きくなるにつれ、本来ホルモンがなければ分解されない油滴中の脂肪が、ホルモンなしでも分解されるようになり、脂肪酸ができて細胞間質液を酸性にします。

肥満から成人糖尿病になり易い理由のl つです。激しい運動をした後では、筋肉の周辺に乳酸がたまり、やはり細胞間質液のpH は低下します。充分な休養をとって乳酸を代謝する必要があります。

このように私達のからだは、日常生活の中で細胞間質液pH が低下し、成人糖尿病になる危険にさらされているのです。

キチン・キトサンの分解物であるグルコサミンが細胞間質液pH の低下を防ぐならば、それを通じて成人糖尿病を予防することが期待されるわけです。


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