キトサンとNK細胞~キチン・キトサン学術報告
キトサンの作用について、「キチン・キトサン協会誌」よりご紹介いたします。健康維持や栄養補給で、キトサン製品を飲用する際、その有用性については個人差があります。 また重篤な疾患のある方がキトサン製品を補助的に飲用する場合は、医師や医療機関と相談の上、ご使用ください。
● キトサンとNK細胞
制ガン剤、ガン細胞と正常細胞を見分けられない / リンパ球のガン細胞を殺す作用 / キチン・キトサン、NK細胞を増強 / キチン・キトサンのガン細胞への作用、リンパ球の働きを介したもの
【 要点 】 キチン・キトサンは、pHを0.5だけアルカリ側に移行させ、LAK 細胞やNK 細胞の作用を強める可能性がある。ネズミ実験で、キチン・キトサンによりガン細胞を殺す働き(LAK作用)が3倍程高まった。キチン・キトサンのガン細胞に対する作用は直接的なものではなく、リンパ球の働きを介したものといえそうである。
制ガン剤、ガン細胞と正常細胞を見分けられない / リンパ球のガン細胞を殺す作用 / キチン・キトサン、NK細胞を増強 / キチン・キトサンのガン細胞への作用、リンパ球の働きを介したもの
【 要点 】 キチン・キトサンは、pHを0.5だけアルカリ側に移行させ、LAK 細胞やNK 細胞の作用を強める可能性がある。ネズミ実験で、キチン・キトサンによりガン細胞を殺す働き(LAK作用)が3倍程高まった。キチン・キトサンのガン細胞に対する作用は直接的なものではなく、リンパ球の働きを介したものといえそうである。
愛媛大学医学部医化学第2教室 教授
医学博士 奥田 拓道 氏
医学博士 奥田 拓道 氏
制ガン剤、ガン細胞と正常細胞を見分けられない
ガンに対する最も有効な手段は、早期発見です。しかし、早期にガンを発見し、そのガンを切除しても、他の場所にガンが移転しているのではないかという不安につきまとわれ、制ガン剤を飲むことになります。この制ガン剤は、ガン細胞を殺す作用があることはもちろんですが、正常な細胞も殺されたり、弱らされたりするのです。
その結果、体の抵抗力がなくなり、肺炎などで死に至る場合が多いのです。又ガンの再発予防のためにステロイドホルモンが使われていますが、この薬は副作用が強く、胃潰瘍を併発して死に至ることもあります。
なぜこのようなことになるのでしょうか。それは、制ガン剤やステロイドホルモンが、ガン細胞と正常細胞を見分けることができないからなのです。
もしガン細胞にしかないような物質が存在すれば、それを手掛かりにガン細胞だけをやっつける薬を考えることができるのですが、そのような物質は現在まで見つかっていません。
以前、ガン細胞にしかない蛋白質を発見したという報告がいくつかなされましたが、そのいずれも正常細胞に存在することが判り、否定されました。
また、発ガン遺伝子がガン細胞にだけあると信じられ、大騒ぎになりましたが、これも正常な細胞にも存在することが明らかになったのです。結局のところ、ガン細胞と正常細胞を見分ける薬の開発は行き詰まっているのです。
リンパ球のガン細胞を殺す作用
しかし、唯一ガン細胞と正常細胞を見分けることのできるものがあります。それがNK作用です。米国のローゼンバーグ博士が約7 年前に大変興味ある研究を報告しました。それは、ガン患者から血液を取り、その中のリンパ球だけを集め、残りはすべて患者に戻します。このようにして集めたリンパ球をインターロイキン-2 と呼ばれるホルモンと一緒に試験管の中で3 日間程培養します。そうすると、リンパ球のもつガン細胞を殺す作用が5 ~10倍に高まってきます。
このようにしてNK 作用を高めたリンパ球 ( L A K細胞と呼びます) を患者に注入するわけです。月曜日に採取したリンパ球を金曜日に注入します。
水曜日に採取したリンパ球は土曜日に注入するというわけです。このような治療を現段階では他のどのような治療を施しても治る見込みのないガン患者25名に施しました。結果は驚くべきものでした。
全身に転移した黒色臆の患者のガンは11 月27 日に治療を始めて、翌年の3 月20 日には完全に消失しました。
また、黒色種、結腸や直腸のガン、腎臓ガン、肺ガンの患者で、肺に転移したガンが明らかに縮小した例が10例認められたのです。残りの14例には残念ながら何の効果も認められませんでした。
しかし、現在考えられる最高の治療をもってしても治すことのできないガン患者25名中で、一人は完全治癒、10名に効果が認められたというのは驚くべき成績です。
キチン・キトサン、NK細胞を増強
リンパ球の中には、インターロイキンー2 によってガン細胞を殺す作用が高まる細胞(LAK 細胞)とそのままで直接ガン細胞を殺す細胞(NK 細胞)があるのです。このようにみてくると、LAK 細胞やNK 細胞に対するキチン・キトサンの働きが気になってきます。ネズミ(ラット)の牌臓からリンパ球を取り出しインターロイキンー2 と共に3 日間培養して、ガン細胞を殺す作用を測ります。
この3 日間の培養期間中にキチン・キトサンを加えたものと加えない場合を比較するのです。
結果は、キチン・キトサンによってガン細胞を殺す働き(LAK作用)が3 倍程高まるというものでした。また、リンパ球にインターロイキン2 を加えずに3 日間培養してガン細胞を殺す作用(NK作用)を測ってみました。
もちろん、この間にキチン・キトサンを加えたものと加えないものを用意します。キチン・キトサンは、NK作用に対しても増強効果を示すというものでした。(図1)
キチン・キトサンのガン細胞への作用、リンパ球の働きを介したもの
つまりキチン・キトサンは、LAK 及びNK の両作用を高めるのです。しかし、キチンやキトサンの分解産物であるアセチルグルコサミンやグルコサミンには、そのような作用はありません。そこでキチン・キトサンがLAK やNK 作用を高めるといっても腸管の中ということになります。胃ガンや大腸ガンなどの消化器ガンの周辺にはリンパ球が集まり、腸管内でキチン・キトサンと接触し、LAK 細胞やNK 細胞を活性化し、ガン細胞を殺す作用が高まる可能性が期待されます。
また、LAK 細胞やNK 細胞の作用は、pH が7.4 で最高ですが、ふつう小腸や大腸では、p H は6.8~6.5 であり、ガン細胞を殺す作用は低く押さえられているのです。
ところがキチン・キトサンは、このpH を0 .5 だけアルカリ側に移行させ、LAK 細胞やNK 細胞の作用を強める可能性もあります。
いずれにしても、このような基礎的研究から推測されるのは、キチン・キトサンのガン細胞に対する作用は直接ではなく、リンパ球の働きを介したものだといえそうです。
基礎研究をふまえて、キチン・キトサンが人のガンに有効か否かを明らかにする臨床研究が待たれるところです。