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キトサンと健康~キチン・キトサン学術報告

キトサンの作用について、「キチン・キトサン協会誌」よりご紹介いたします。健康維持や栄養補給で、キトサン製品を飲用する際、その有用性については個人差があります。 また重篤な疾患のある方がキトサン製品を補助的に飲用する場合は、医師や医療機関と相談の上、ご使用ください。

キトサンと健康
水産と医学がドッキングした研究を開始 / キトサン、腸のphがアルカリに移行 / キトサン、空腹中枢や副交感神経を刺激 / キトサン、酸性体質を改善 / キトサンがNK細胞を活性
【 要点 】便秘をすると腸で異常発酵が起こり酸性になりがち。しかし、キトサンを食べると、腸の空腸から回腸に至るまでのphがアルカリ側に変わる。これは、腸の中にある(H-) 水素イオンをキトサンが吸着するためで、このことは便秘あるいは消化不良の改善に大変重要な意味を持つ。キトサンの摂取は酸性体質の改善につながる。


愛媛大学医学部医化学第2教室 教授
医学博士 奥田 拓道 氏
水産と医学がドッキングした研究を開始

水産庁中央研究所から電話があり、水産関係と医学関係研究者で、水産物による健康の増進と病気の予防に有効な研究の合同研究班を作ってみたいとの提案が私にあり、大変すばらしく画期的な事だと言いました。

厚生省、文部省の研究に協力しましたが、分野の違った方々で、一つの目的のために研究する事は今の日本の中では出来にくい事情があり、それはまさに歴史的にみて、すばらしい事だとその方に言いました。

「今までの政府関係の研究には、官僚機構の中を税金が通ると血税の血の色が真っ白になってしまう。社会への貢献より趣味のような研究に終り税金のむだ使いが非常に多い」と言う事でした。

そうであってはならない、我々のこの研究は血税の血の色を決して白くしてはならない。そして血の色を常に感じて研究し「血の色を消すな」を合言葉に研究を始めました。

水産関係者から頂いた資料で色々な機能の目安を作り、それにいろんな物質を用いて5年間研究を行いました。その一環として出て来たのが「キチン・キトサンの研究」でした。

幸いにも「キチンの研究班の業績が認められて、平成6年度から、5年間又、新しく研究が始まります」。今度も水産と医学がドッキングした研究です。目的は水産食品の持つ一次、二次、三次の機能の総合的な成果を皆さんで簡単に利用出来るようにマニュアル化するものです。

いずれにしても金や名誉よりも命が大切な「命の時代」が来ました。健康で、長生きして心を豊かに生きるのが最高の人生であると考える時代です。異なった分野の人達と協力し対応していかなければならないと考えます。

キトサン、腸のphがアルカリに移行

キチン・キトサンの機能性と有効性についてお話させていただきたいと思います。

キチンはアセチルグルコサミンというものがつながったものですが、キトサンはグルコサミンという物質がたくさんつながったものです。グルコサミンには、アミノ基(NH2とかNH3といいます)があります。

キトサンはこれらがつながったものです。またグルコサミンには水素イオンと結んでNH2がNH3になる性質があります。この水素イオンが多ければ酸性で少なければアルカリ性になります。

私たちの腸の中は便秘なんかをしますと異常発酵が起こったりして酸性になりがちです。キトサンを食べますと、腸の空腸から回腸に至るまでのphがアルカリ側に変わると言います。

phは7が中性ですが、キトサンを食べますと0.5ほどアルカリ側に移行することがわかっております。その理由は腸の中にある(H-) 水素イオンをキトサンが吸着するからです。このことは便秘あるいは消化不良の改善に大変重要な意味を持ちます。

キチン・キトサンを食べるとおなかの具合が良くなったという経験のあった方が多いと思いますが、このあたりが理由になっているからです。といいますのは私たちの食べ物の中にあるデンプン、たんぱく質、脂肪のようなものはそのままの形では絶対に腸から吸収されません。

必ずデンプンの場合はアミラーゼ、たんぱく質の場合はトリプシン、キモトリプシン、脂肪の場合はリバーゼというような消化酵素によって分解されます。

消化酵素はph7.0の中性付近で一番良く働く性質を持っています。少しでも便秘をしますと腸のphは6.0や6.5で酸性になってしまいます。このときにキトサンを食べますと、0.5ほどアルカリに移行しますから消化酵素の働きは強くなり、栄養素の分解が良くなり、うまく吸収され、また異常発酵も起こらなくなります。こうして腸の状態が改善されていきます。

キトサン、空腹中枢や副交感神経を刺激

また腸内の膨大な量の腸内細菌と呼ばれる菌は私たちにとって好ましくない病気などを起こしたりする菌です。これらの細菌が酸性になるとどんどん増殖していくという面から見ても腸内を中性付近に保つことが重要になるのでキトサンの役割が大切になってきます。

脂肪はリバーゼという消化酵素によって分解され脂肪酸とグリセロールになり吸収されます。油が体内に入ってくると消化酵素と一緒に分泌される胆汁によって小さな油滴になって、その表面を胆汁の中にあるリン脂質が取り巻いて膜を作ります。リン脂質のリンの部分はマイナスになっています。

キトサンはプラスですから、リン脂質の表面に近づいてキトサンの繊維に油滴がたくさんくっついた状態になり、リバーゼの働きが邪魔されて、脂肪の吸収が低下します。

十二脂腸で消化酵素リパーゼと胆汁からのリン脂質などが入って来ます。動脈硬化は血管の墜にコレステロールエステルが蓄積したことを言います。コレステロールエステルはコレステロールエステラーゼという酵素によって分解されてはじめて吸収されます。

キトサンはこのコレステロールエステラーゼが分解するのを邪魔します。ということはキトサンはコレステロールエステルとコレステロールの吸収を妨げ、また先程言いましたように脂肪の吸収も妨げるので実に3つの吸収を阻害すると言えます。

私たちは10数年前にガン患者が急激に食欲を落としていく過程を研究しました。どういう理由で食欲をなくし痩せていくのかを研究しまして、痩せさせる毒素を調べました。

この研究でキトサンを分解したグルコサミンが実はこの毒素(私たちはトキソホルモンL と呼んでいます)の作用を大変微量に抑えるということを明らかにしました。

またグルコサミンやアセチルグルコサミンは健康な人にも別の経路で食欲を増加させる可能性があります。グルコサミンとアセチルグルコサミンは肝臓に働いてそこにある迷走神経という副交感神経の一部を刺激します。

これが空腹中枢(あるいは接触中枢ともいいます)を刺激し空腹感をもたらします。キチン・キトサンを食べて「おなかがよく空く」という方がいらっしゃるのではないでしょうか。人間にとって食欲が出るというのは大変重要なことです。

病気のときでも食欲を出す作用のある薬はだいたい脳に直接働くものが多く習慣性があったりして長く使えません。それに比べてアセチルグルコサミンやグルコサミンにはまったく副作用の心配が考えられません。

ところが空腹中枢というのは空腹感を感じると同時に血管を拡張します。血管の収縮・弛緩は交感/副交感神経でコントロールされていて交感が優位のときは血管が拡張されます。

キチンキトサを食べて肩こり、冷え性、偏頭痛がよくなったということをよく聞くのですが、もしそれが本当であるならば、キチン・キトサンの分解産物であるアセチルグルコサミンやグルコサミンが空腹中枢を興奮させて空腹感をもたらすと同時に副交感神経を刺激して抹消循環つまり毛細血管に流れる血液の量を増やし循環をよくし、肩こり、冷え性、偏頭痛を治しているのではないかと推測ができます。

キトサン、酸性体質を改善

よく「酸性体質」とか「アルカリ性体質」とかいわれていますが、その酸性体質を改善し、正常化する働きがキチン・キトサンにあるのではないかと研究がされています。

細胞の周りを取り囲んでいるのは細胞間質液という血液から染み出した溶液です。これは血液とは非常に異なっています。血液のphは常に7.4でアルカリを保っています。

ですから今、医学あるいは栄養学の専門家は「酸性体質は迷信である」と言っています。しかしこれは血液が細胞の周りを取り巻いているのであればそれは事実になるのですけれども、実際に取り巻いているのは細胞間質液で、この質液は実は酸性になります。

血液のphをアルカリに保っているのはヘモグロビンですが、これは細胞間質液にはありませんのでこの質液はちょっと血液が止まって炭酸ガスが蓄積しますと酸性になってきます。つまり酸性体質は存在します。

今、一番問題になっている成人糖尿病はインシュリンがあるにもかかわらず、筋肉などがそれに反応しないという病気です。これは健康な人でも日常的に起こっているのです。筋肉の表面が酸性になっていることがひとつの大きな理由です。

例えば寝ている時は背中が圧迫されていたり、長時間同じ姿勢で椅子に腰掛けている状態では下肢の方が酸性になっているのです。こういう時には立ち上がって運動することで血液の流れを順調にすることが大変重要です。私たちの体の一部に常に寄生している酸性体質の改善につながるのです。

そこでキチン・キトサンを食べて空腹中枢が刺激されると副交感神経の刺激により抹消神経の血液の流れが改善されることになれば、これはキチン・キトサンが酸性体質を改善することにもつながります。そして酸性体質が改善されれば成人糖尿病治療につながることになります。

キトサンがNK細胞を活性

また、ガンに関しては、ガンと正常な細胞の間には質的な差はなく量の差しかないので、ガン細胞をやっつける放射線治療などは、必ず程度の差はあっても正常な細胞がやられるわけです。しかしたった一つ、ガン細胞と正常な細胞を見分けてくれるものがあります。

それはリンパ球の中にあるNK細胞とかナチュラルキラー細胞と呼ばれているもので、ガン細胞を見分けて殺す働きをします。キチンではなくてキトサンはNK細胞、あるいはLAK細胞の活性を高めます。要するにリンパ球の中にあるガン細胞を殺す働きを高めるということが試験管の中で証明されているわけです。

腸内で、免疫を担当するリンパ球系のものが腸細胞の中にあり、しかも腸の内膜に露出した形で最近見つかっています。それがいろいろな免疫の情報を内部に与えていることもわかりました。

キトサンが腸を通過するときにそのリンパ球系のものに接触する可能性が十分あることもわかってきました。大腸ガンなどの消化器系のガンがあるとその周辺には新たにリンパ球であるNK やLAK細胞が集まって来ることが考えられるので、その時にはキトサンが直接ガン細胞周辺の細胞と接触してガン細胞を殺す働きをすることが考えられます。

消化器系ガンでなくても、キトサンが通る過程で腸の内膜に露出しているリンパ球を活性化して、消化器系以外のガンでも治療することは可能性としてあるのではないでしょうか。こうしたリンパ球の活性を高めてガンの治療をしていく方法はこれからおおいに進めていく必要があります。

いろいろな話しをしてきましたが、キチン・キトサンは構造がはっきりしているという点で、このような健康食品では特異な地位を占めている物です。


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